本から本へつながる書評ブログ『淡青色のゴールド』

読書家の経営コンサルタントのdaisuketによるブログです。一冊ずつ丁寧に書評しながら、合わせて読むと面白い本をご紹介します。

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今月読んだ本・買った本(2025年10月)

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今月読んだ本・買った本(2025年10月)

いろいろな本を読んで生きています。紙で読んだ本、電子書籍で読んだ本、オーディオブックで聞いた本と、あと買った本と。単に趣味の本もありますが、仕事に関係していたり考えたい問いがあって読む本もあるのでご紹介します。

 

読んだ本

紹介は読み終えた順です。

『ハイファに戻って/太陽の男たち』(ガッサーン・カナファーニー著)(黒田寿郎、奴田原睦明訳)

パレスチナ解放運動にも関わり1972年に36歳の若さで爆殺されたガッサーン・カナファーニーの作品を収めた中・短編集です。描かれているのは家族との別れ、家族への思い、家族の生活を守るための葛藤、などなど。一つ一つの感情やそれを生み出しているものを切り分けて取り出せば例えそれが悲劇であったとしても世界中どこの国の文学にもあり得るものでしょう。それこそ平和な国の文学であっても。

それでも本書の7編の作品の舞台やテーマが難民キャンプ、密入国、虐殺、戦争と戦闘という中でしか描かれ得ず、著者自身の体験も交えたものであるということを感じなければならないと思います。著者が亡くなって30年以上が経ち、状況は悪化し続けて、パレスチナを黙殺し続けている世界が今も続いていることに戦慄しますが、文学だからこそそこに描かれた感情や願いが文化圏を超えて届く可能性について希望を捨てず本書を薦めていきたいです。

『人間の本性を考える 心は「空白の石版」か (中)』(スティーブン・ピンカー著)(山下篤子訳)

上巻では「心は空白の石板ではない」ことを明らかにしました。

中巻では、じゃあ啓蒙主義からの拠り所だった「空白の石板仮説」が崩れるなら人間や社会はどうにかなってしまうのでは?という疑問(「生まれつきの違いがあるなら…」「努力しても無駄なら…」「すべてがあらかじめ決定されているなら…」「人生に意味がないなら…」)を一つずつ打ち落としていく第Ⅲ部(「どうにかなんてならないから大丈夫だよ!」)と、空白の石板じゃないのだとしたら人間の本性はどういうことなのかに改めて向き合う第Ⅳ部。第Ⅳ部が進化心理学の真骨頂というかこれを説明したくてここまで話してきた、という感じの内容です。

相変わらずピンカー節になかなか苦労していますが、それでも慣れてきたのか、大筋が掴めてきたのか、少しずつ楽に読める様になってきました。ピンカーは他にも読みたい著作があるので、下巻を読み終わる頃には別のもどんどん読みたいぜ!という気持ちになっているといいのですが。

『昨日、若者たちは』(吉田修一)

香港、上海、ソウル、東京、4つの都市で暮らす若者を描く短編集。

元は『オリンピックにふれる』というタイトルだったものが改題されて『昨日、若者たちは』になっており、4編それぞれの若者たちの人生にオリンピックが何らかの形で「ふれて」来るのですが、その触れ方や距離感は四者四様でオリンピックを射程圏に目指す距離にいる人もいれば、周囲の人の間接的な視点で触れる人もいて、それは読者である私たちもきっとそうでしょう。

私にとっては東京五輪もまったく近さを感じないものでしたが、自分の人生に何らかの形、距離感で「触れた」という人も少なからずいたのでしょう。

そして改題されたタイトルでは「昨日」という言葉が用いられて日常が昨日から今日、そして明日へと過ぎていくことに意識が向けられるのですが、遠い過去から近い過去まで、そしてこの先に続いていくものまで、必ずしも思い通りにならない、というかむしろままならないことの方が多い日常を積み上げながらそれでも歩んでいく微妙な機微を描いてくる、これぞ吉田修一という感じの短編集でとても良かったです。

本作のことではないですが、話題になった映画『国宝』を観た方は多かったかと思いますが、あの作品の原作は吉田修一なんですよね。映画が楽しかったという方も、そうでもなかったという方も、原作にはまた別の魅力があるというか映画で削ぎ落とされるしかなかった部分に同作の魅力があると思いますし、原作小説の地の文は発明的で、吉田修一の最高傑作というぐらいのすごい作品なのでぜひ読んでいただきたいなと思います。そして、吉田修一の『国宝』で初めて吉田修一作品を読み、別の作品にも関心があるという方にはぜひこの『昨日、若者たちは』のような純文学作品を読んでみていただきたいです。『国宝』は吉田修一作品の中でも最高傑作クラスに面白いと思いますし、他にも『悪人』『怒り』など話題になった映画原作も多いのですが、その手の感情の起伏が激しい作品とは別の作品群にも吉田修一の魅力はありますので、ぜひ多くの方に味わっていただきたいです。

『能力主義をケアでほぐす』(竹端寛)

知人とやっているクローズドの読書会でみんなで読んだもの。竹端さんのブログが元になっており、能力主義やケア、その周辺の話題をテーマごとに編集し直して適宜加筆修正されています。

読書会では竹端さんと同じように子育ての経験や家族との関わりから能力主義の歪みについて感じるところのある方もいれば、わかってはいるけれどその呪いから抜け出すの難しいよね、という話だったり、そもそも社会の構造として子育てをし始めるまでケアの重要性に気付く余地がないということが問題だよね、など色々みんなで話しました。

竹端さんが読んだ本の感想が軸になっているという構成もあり、読みたい本がけっこう増えたのでがんばって読んでいきたいです。特に磯野真穂さんの『他者と生きる』はなるべく優先度上げたい。積読の前で悩みますけども。

『日本評価研究』第25巻第2号

evaluationjp.org

日本評価学会の学会誌。

今回は8本中3本が休眠預金事業関連で、地域福祉とファンドレイジングがテーマのものも1本ということで、普段の仕事にも関わる論文が多くて興味深かったです。事例報告的な側面では普段関わっている関係で知っていることも多かったですが、自分が関わっていない事業については同じ休眠預金事業であってもなかなかインパクト評価の実際の進み方進め方や、課題の話などは個別の評価報告書だけ読んでいてもなかなかわからないところなので、参考になる部分もたくさんありました。休眠預金事業で事例として触れられていたいくつかのものについては後ほど事後評価報告書も参照したいです。

特にルーブリックやフィデリティ尺度の開発による評価の中小の現場においての適用可能性については考えてみたいところ。休眠預金事業は事後評価とはいえしっかり評価予算ついてあれだけの積み上げがなされてるので他事業の評価にも使っていけるものが増えていくと良いよね、と思いますし、私が休眠預金事業に評価アドバイザーなどで関わらせていただく際にはそういう気概で臨みたいものです。

『できるGoogle NotebookLM 可能性は無限大!自分専用AIノート活用法』(清水理史、できるシリーズ編集部)

タイトルの通りNotebookLMの指南本。何か新しいツールやサービスを使うときはたいていこの手の本を一冊は読むようにしています。大抵の使い方は触りながら覚えた方が早くはあるのですが、自分が見落としている使い方や特徴があるまま慣れてしまうと後で追加学習するのが億劫になってしまったりするので早めのうちになるべく体系的に理解しておきたいという側面と、あとは仕事柄Webサービス等を薦めたり使い方を説明したりする場面がそれなりにあるので初心者向けの説明の仕方の参考にしたいという側面の、大きく2つの理由からの読書です。

あとは今回は「できるシリーズ」を読んでみる、というのが類書の中から本書を選んだ理由でした。「できるシリーズ」はGoogleAnalyticsの「できる逆引き」など派生的なものはいくつか読んだことがあったのですが、メインのシリーズはおそらく本書が初だったのですが、想像していた以上にだいぶ初心者向けですね。本書がたまたまそうだったのか、シリーズとしてそのような位置づけなのか、後ほど別のものも少し眺めて今後の参考にしたいと思います。

『宇宙と物質の起源 「見えない世界」を理解する』(高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所編)

つくばの高エネ研の研究者の方たちが執筆した宇宙論。宇宙の本は関心があってたまに読むのですが、相変わらず素粒子物理学は難しい。色んな本で何度読んでも頭に入ってこない部分なのですが、この本は章ごとに執筆者が別々で、同じ話題が別の角度から何度も言及されるのでそこは重点的に理解に向かうことができた気がして良かったです。特にヒッグス場とヒッグス粒子のあたり。(わかっている人にとっては同じ話を何度も!と感じる箇所なのかなとも思いますが、ブルーバックスなので初学者に寄り添うということで良いのではないでしょうか)

研究がどんどん進んでいるんだなと感じる話が色々あったが、ダークマターの計測の話なんかは今後がとても気になるところです。これからもわからないなりにも関心を持ち続けてたまに読んでいきたいテーマ。それにしても学生生活を過ごした馴染み深い「つくばの特産物は反物質」は笑いました。なるほどそうだったか。高エネ研、見学行きたい。

『文と本と旅と 上林曉精選随筆集』(上林暁著)(山本善行編)

私小説家上林暁の随筆集。上林暁氏のことは作品も読んだこともなく、お名前も存じ上げなかったのだけど、古書店で偶然見かけてなんとなく惹かれて購入したものだったのですが、良かった。「文」「本」「旅」「酒」「人」にまつわる文章が選ばれたもの。小説家デビューする以前に文芸誌の編集者だったという経歴を持っていらっしゃり、大正から昭和前半の文壇の交流の様子が随所に描かれていて楽しかった。手元の初版本の帯には「じっくり噛み締めれば味が出る」という言葉が付されていて、確かにめちゃくちゃに感情を動かしてくる文章というのでは全然なくて、じっくり味わって読みやすい文章なのでふむふむと読み進めていたら、これは本人の自分の文章への評価で、編集も経験した人で私小説家としてどこか自分だけでなく自分の文章も俯瞰するような感じがあったのかなと味わいました。氏が『改造』編集記者時代に作家の元に原稿を取りに行ったという作品がたまたま我が家の積読にあったので次はその本を読もうと思います。

買った本

『おいしいごはんが食べられますように』(高瀬隼子)

未読の芥川賞受賞作を少しずつ読み進めようキャンペーン。

『舞台』(西加奈子)

未読作家に少しずつ入門していこうキャンペーン。

『現象学という思考』(田口茂)

何年も前から関心があってすこーしずつ勉強を進めている現象学。今年は別の方面に関心が進んでいって、全然現象学の本読めないまま一年が終わってしまいそうだったので、忘れてしまう前に一冊ぐらい読もうということで前々から気になっていた本書を購入。

『人工知能のための哲学塾』(三宅陽一郎)

こちらは今年の関心テーマに関連した本だったのですが、目次を見るにフッサール現象学も話題に入っているようでちょうど良かったなと喜んでいます。こういう別の関心で買った本・読んだ本で書かれていることや読んで考えることがつながるのも読書の大きな楽しみの一つですね。

今月のカフェ読書

ハトコーヒー(hato coffee)

ハトコーヒーのコーヒーとピザトーストの写真

初訪問。北24条駅と北34条駅の間の24条駅寄りの辺りにある小さなカフェ。店内にはジャズが流れており音楽を聞きながら美味しいコーヒーをいただけます。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。