こんにちは。書評ブログ「淡青色のゴールド」へようこそ。本記事は小出義雄さんの『マラソンは毎日走っても完走できない』の書評記事です。マラソン指導の第一人者、小出監督がマラソントレーニングについて分かりやすく解説したマラソン初心者にオススメの一冊です。(実際に私はこの本を踏まえてトレーニングをしてマラソン完走タイムを30分縮めることに成功しました!)
- なぜ読んだか?どんな本か?本書をオススメする人
- トレーニングの考え方は初心者もプロも変わらない
- マラソンの体つくりのポイントは「つくる」「ほぐす」「維持する」
- 自分なりにとにかく楽しく走る
- まとめ:楽しく趣味で走ることと、鍛えることは両立できる
- 『マラソンは毎日走っても完走できない』を読んだ方にオススメの本
なぜ読んだか?どんな本か?本書をオススメする人
内容紹介
有森裕子さんや高橋尚子さんをはじめ数多くのオリンピックメダリストランナーを育てた小出義雄監督による本で、マラソントレーニングの考え方を解説している本です。トップアスリートを多く育てている小出監督ですが、小出監督は本書はすべてのマラソンランナーに向けて書かれた対象の非常に幅広い本だとおっしゃっています。これからランニングを始めるという方から、何度もレース経験があり記録更新を目指しているような方まで。なぜなら小出監督は「マラソントレーニングの基本的な考え方は初心者もプロも変わらない」と考えているからです。
Amazonの内容紹介を引用します。
市民マラソン大会に出ると、30km過ぎから歩いてしまったり、あるいはスピードがガクンと落ちてしまう人がとても多い。みなさん、「毎日5km走っていた」など練習熱心な人が少なくないのだが、ではなぜ走れなくなってしまうのか?その理由は、毎日走っているだけではマラソンの練習になっていないから―。本書では、このマラソン用の練習を説いていく。初めて走ろうと考えている人から、将来フルマラソンを走ってみたいと思っているジョガー、そして3時間台での完走を目標にしているランナーにまで、段階別に伝授。金メダリストたちの練習内容も初公開する。
読んだきっかけ
私は2017年の東京マラソンにチャリティランナー(指定されたNPO等の団体への寄付10万円をクラウドファンディングで募ることで出走権を得る制度)として出場しているのですが、その東京マラソン完走に向けたトレーニングのために購入しました。
先に引用した内容紹介に書いてある「30km過ぎから歩いてしまったり、あるいはスピードがガクンと落ちてしまう人がとても多い」という点に私はまさに当てはまっていました。歩きこそはしなかったものの初マラソンの最後の10kmは本当に辛かったのです。なんとか完走したとはいえ「もう二度とフルマラソンなんて出ない!」と考える程でした。
チャリティランナーとしてクラウドファンディングに挑戦することを決めたのは主に当時の仕事関係のつながりの中で半ば勢いで挑戦を決めることになったので、決断した段階ではしっかりと完走できる自信がなく、とは言え寄付という形で多くの人に応援してもらうからには情けない走りは見せられない、とクラウドファンディングへの挑戦を表明した日にさっそく購入したのがこちらの本でした。
そしてクラウドファンディングも成功して無事に出走できたのですが、結果として、この本に基づくトレーニングを経て、ネットタイム4時間5分にて完走することができました。初マラソンは4時間35分での完走だったので30分タイムを縮められたのです。レース前の目標はサブフォー(4時間切り)だったのでわずかに目標には足りなかったのですが、練習通りのペースでは走ることができ、時間やスピードを意識しながら走ることができるようになったという点からもかなりランナーっぽく成長することができたと感じています。
オススメ度
★★★★★(5/5)
本書をオススメする人
本書は以下のような方に特にオススメです。
- 初めてのフルマラソンに挑戦する人
- 初めてのフルマラソン完走に挑戦する人
- マラソン完走経験はあるものの「30kmすぎてからが辛すぎた」と感じている人
- そもそも「トレーニング」に拒否感があり、楽しく走ることを重視したい、でも少しマラソンにも興味がある人
小出監督自身はすべてのランナーに向けて、とおっしゃっていますが、私としてはやはり私と同じような初心者市民ランナーにオススメしたいです。本書を一度読むことで趣味としてのランニングを楽しみながら「トレーニング」という考え方を気軽に持ち込むことができるようになり、マラソン大会に向けてというだけではなく、その後のマラソン人生を豊かにすることができると感じています。
トレーニングの考え方は初心者もプロも変わらない
すでに記載した通り、本書はこれからランニングを始めるという方から、何度もレース経験があり記録更新を目指しているような方まですべてのマラソンランナーという非常に幅広い対象に向けて書かれた本です。なぜなら、小出監督は「マラソントレーニングの基本的な考え方は初心者もプロも変わらない」と考えているから。
その基本的な考え方とは、
- 走るための体つくり(特に脚つくり)が大切である
- 体つくりのために計画的にトレーニングを行うことが必要である
- 作った体を本番で活かすためのコンディショニングとレース運び
などに集約されます。
中心となるキーワードは「体つくり」ですね。
マラソンの体つくりのポイントは「つくる」「ほぐす」「維持する」
体つくりのためにはトレーニングをしなくてはなりません。
本書のタイトルは『マラソンは毎日走っても完走できない』ですが、つまりは計画なくやたらと走ってもトレーニングにはならない、ということです。
まず必要なのは「負荷をかける」という発想。全力で走ったり、距離を走ったりして脚と心肺機能を追い込んでいくことが必要です。インターバル走やビルドアップ走など負荷をかけるための具体的なトレーニング法も紹介されています。
そして負荷をかけた後には体を「ほぐす」ことが大切。ゆっくりジョギングの日を適度にいれると疲労が取れやすいそうです。
そして最後のポイントであり、私が最もなるほどなと思ったのが「維持する」ということ。せっかく負荷をかけ鍛えた脚や心肺機能も適度に刺激を入れ続けなければ簡単に元にもどってしまいます。プロのランナーでも2週間練習しなければあっという間に衰えてしまうし1ヶ月も経てば「ただの人」になってしまうというのは印象的でした。
トレーニング計画を立てる上では以上のことを意識しながら、週に取れる練習時間にバランスよく負荷をかける日、ほぐす日、刺激を入れて維持する日を配置していくという考え方になります。とても分かりやすいですし、自分の生活に合わせて自分で簡単に考えることができます。
自分なりにとにかく楽しく走る
自分に合わせた計画を作る、という話が出ましたが、個人にあわせるというのは小出監督の考え方の基本になっているようです。 Qちゃんや有森選手を始め小出監督が育てた有名選手のエピソードもたくさん出てくるのですが、一人ひとりに合わせたメニュー、状況に合わせた対応など本当に柔軟に対応しているのだなと感心しました。
また、走るフォームを気にする必要はないという点もなるほどなと思いました。走っているうちに体は自然と走りやすいフォームに最適化されてくるので無理に意識しすぎて逆におかしくなってしまうより楽しく走ることが重要とのことです。
トレーニングの他、フォームやシューズなど道具選びといった細かなところまでプロ選手の考え方の背景にある大切な基本を噛み砕いて解説してくれるので、この本を読んでいると走りたくなります。それも、上達するためのトレーニングというものが楽しみになるのです。
まとめ:楽しく趣味で走ることと、鍛えることは両立できる
私はジョギングの習慣を高校の頃から15年以上持っていますが、元々レースに出ることやマラソンを完走することなんて考えたことはなく、気分転換や健康維持のためという側面が強かったです。走ること自体が目的なのではなくあくまで気分転換や健康維持といった目的のための手段として走っている、というような感覚がどこかにあるという意識でした。もちろん、走ること自体も好きだし楽しいから10年以上も走ることを手段として選び続けているのですが、どこかでそのような意識もありました。私と同じように考えていらっしゃる方もいるのではないかと思います。
そんな私なので、早く走るとかより長い距離を走れるようになるためには苦しく頑張らないといけないというイメージがあって、それはただの趣味ランナーの私には荷が重い、、とずっと考えていました。それがこの本を読んでトレーニングに対する意識はかなり前向きになりました。楽しく走ることと、鍛えることは矛盾するものではなく両立することができるということ。それが、本書を読んでの一番の学びであり、大げさに言えば一生使える大切な考え方を知ることができました。
ランニングを趣味とする人にはぜひ読んでほしい一冊です。
『マラソンは毎日走っても完走できない』を読んだ方にオススメの本
最後に本書を読んだ方や興味を持った方にオススメの本をご紹介します。
村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』
村上春樹の「走ること」にまつわるエッセイ集です。タイトルが良いですよね。小説家、村上春樹がマラソンを趣味とする「走る作家」であることをご存知でしょうか。私なんか同じ土俵で趣味を語るのは憚られるぐらいものすごく走る作家さんです。その村上春樹が日々のランニングや、出場したマラソンレースについて、走るときに考えていることなどいろいろな視点から走ることについて語ります。走るときにあれこれと思考が飛んでいくことについての記述などはさすが作家だなとうなりました。この本は「村上春樹が苦手だと言う人でもこの本は好きという人が多い」と言われる本ですので、村上春樹の小説が苦手だという方にもオススメできます。
書評記事も書きましたので良ければお読みください。
最後までお読みいただきありがとうございました。