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書評『こどもホスピス―限りある小さな命が輝く場所』ホスピスはこどもが”自分らしく生きる”ための場所

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書評『こどもホスピス―限りある小さな命が輝く場所』ホスピスはこどもが”自分らしく生きる”ための場所

こんにちは。daisuketです。本記事は田川尚登さんによる『こどもホスピス―限りある小さな命が輝く場所』の書評記事です。

 

 

内容紹介

本書はご自身の子どもが病気入院を経験し、ご自身や家族の経験から子どもと医療の分野に関わりはじめ、現在は「こどもホスピス」の立上げに挑戦されている著者が、なぜそのような取組みを始めることになったのか、著者本人の経験を振り返りながら書かれている本です。

 

日本ではまだまだ少ないこどもホスピスという場所がどんなものなのか、そして子どもと医療というテーマについて、著者自身の体験や多くの患者・家族の実話から考えることができます。

 

こどもホスピス―限りある小さな命が輝く場所

こどもホスピス―限りある小さな命が輝く場所

  • 作者:田川 尚登
  • 発売日: 2019/12/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

内容(「BOOK」データベースより)
家族のように、友のように、病児に寄り添い、最期まで支える。
日本ではまだ少ない「こどもホスピス」の設立のために活動する著者が、わが子を亡くした自分や患者会遺族の体験をふまえ、こどもホスピスとは何か、その必要性とともに語る。

 

「子どもと医療」という十分に知られていない分野

私はフリーランスのコンサルタントして仕事をする中で企業だけでなく、NPOなどの非営利・公益目的の活動を行っている組織の方と関わる機会も多く持ってきました。その中で感じるのは、子ども支援や子育て支援、そして教育など子どもや親子に関わる活動をしている団体はとても多いということです。活動している団体や人の数が多いということはそれだけ課題が多いということです。

 

ここ数年で「子どもの貧困」というキーワードはかなり認知が広がってきたように思います。国内にも支援を必要としている子どもが多いということはそれなりに知られるようになってきました。ただ、子どもを取り巻く社会課題というのは貧困問題だけではありません。まだまだ知られていない課題もたくさんあります。その代表的な一つと感じるのが「子どもと医療」に関わる分野です。

 

一口に「子どもと医療」といってもその範囲は多岐にわたります。先天性疾患や難病と闘う子どもという小児医療の問題だけではありません。

 

例えば入院中の子どもと家族の問題です。入院期間中、毎日病院に付き添う親の負担は大きく心も体も疲弊していきますし、病室で一晩中一緒に居られる訳ではなく、夜になったら子どもは親と離れなくてはなりません。小さな子どもにとって親と離れて病院という「怖い」場所に一人にされる辛さはどれほどのものでしょう。そして入院する子どもに兄姉・弟妹などのきょうだいがいる場合、親が入院している子に付き添っている間他のきょうだいは寂しい想いをすることになります。病院でおとなしく過ごすことも小さい子どもにとっては難しいですし、きょうだい児のケアが不十分になってしまうこともあるのです。

 

お子さんをお持ちの方であっても、長期の入院を伴ないような疾患にかからない限りはなかなか普段想像もしないようなことがたくさんあります。そして多くの方が普段なかなか想像しにくい世界だからこそそのケア体制もまだ十分には整っていない状況です。

 

本書ではそうした課題の深刻さについて著者の実体験からリアリティをもって感じることができます。著者の田川さんは入院中の子どもに付きそう親が休んだり寝泊まりができる家族の滞在施設兼きょうだい児保育施設を運営する活動施設の立ち上げなどを行っていきます。私も全国の病院の近くにドナルド・マクドナルド・ハウスという滞在施設があること自体は知っていましたが、それがどんな場所でありどんなに大切な役割を果たしているかということは本書を読んで改めて強く感じました。

 

こどもホスピスのイメージが変わる

著者は現在、次なる活動としてこどもホスピスの立ち上げに挑戦しています。本書を読んで私のこどもホスピスに対するイメージは大きく変わりました。

 

どうしても終末期医療というイメージが強く、いかに人生の最期の苦しみを減らすかのケアというぐらいに考えてしまっていたのですが、それは違っていました。こどもホスピスは死ぬための場所ではなく、「自分らしく生きるための場所」であり、それを最大限に支援するためにこそ専門の施設が必要なのです。子どもや家族が一緒に大切な時間を過ごすためにはさまざまな観点からのケアやサポートが必要でそれを専門に行う頼もしく、そして温かな場所がこどもホスピスであるということを知りました。

 

本文から田川さんご自身の言葉を少し引用します。

はるかは私に、どんなに短い命でも、愛し愛されるべき大切な命であるということを教えてくれました。はるかが生まれてきてくれた意味をかみしめながら、私は今日も夢に向かって歩んでいます。


子ども自身が、「この世界に生まれてきてよかった」と思えること。両親や家族が、「この子が生まれてきてくれてよかった」「出会えてよかった」と思えること。それこそが、限りある子どもの命と向き合うということではないでしょうか。

 

子どもと家族の、そして関わる人たちの温かな実話

本書はこどもホスピスに関わるお話ということで、お子さんを亡くされた経験を持つ方たちやそのお子さんたちのエピソードもいくつか出てきます。読みながら涙が出てしまう場面も多くありました。それでも悲しいだけのお話ではなく、あたたかな親子の姿がいくつも描かれていたからなのか、とても温かい気持ちになり、私は改めてこどもを授かり、子育てをしてみたいと考えたりしました。

 

本書をきっかけに子どもと医療という分野について知る人が増えることを、そして著者たちのこどもホスピス建設の活動が成功されることを願っています。

 

こどもホスピス―限りある小さな命が輝く場所

こどもホスピス―限りある小さな命が輝く場所

  • 作者:田川 尚登
  • 発売日: 2019/12/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

『こどもホスピス―限りある小さな命が輝く場所』を読んだ方にオススメの本

鍋谷まこと・藤井美和・柏木道子『輝く子どものいのち こどもホスピス・癒しと希望』

輝く子どものいのち こどもホスピス・癒しと希望

輝く子どものいのち こどもホスピス・癒しと希望

  • 発売日: 2015/05/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

同じくこどもホスピスについての本です。日本初、そしてアジア初のこどもホスピスは大阪に設立されました。ホスピス設立までの、そして設立されたホスピスの中で子どもたちと家族がどのように命を輝かせたのか、家族や命や愛の大切さということをこれほど感じさせてくれる本はなかなかありません。

 

内多勝康『「医療的ケア」の必要な子どもたち:第二の人生を歩む元NHKアナウンサーの奮闘記 

 「子どもと医療」という分野は病院やホスピスで過ごす子どものことだけに留まりません。家庭で地域で暮らしながらも通院に加えて、日常生活の中で定期的な投薬や痰の吸引、呼吸の管理等の医療的な配慮のいるケアを常に必要とする「医療的ケア児」と呼ばれる子どもたちも大勢います。医療技術が発達し、これまでは救えなかった多くの子どもたちの命が救えるようになった一方で、医療的ケアが必要な子どもの数は増え、しかし医療的ケア児に対する支援体制は十分ではないという状況が続いています。本書は、NHKアナウンサーだった著者が社会福祉士を取得し、第二の人生として医療的ケア児のための福祉施設に務め、奮闘する姿を描いたものです。子どもと医療という分野に興味のある方にはぜひ読んでほしい一冊です。

 

駒崎弘樹『「社会を変える」を仕事にする ― 社会起業家という生き方』

医療的ケア児を始め、日本にはまだまだ子どもを取り巻く問題が多くあります。そして現在多くの人たちが社会課題を解決しようと奮闘しています。特に「社会起業家」と呼ばれるビジネスの手法も取り入れながら仕組みとして課題解決に寄与する方策をなんとか組み上げようとする人たちに注目が集まっています。本書は認定NPO法人フローレンスを立ち上げた日本を代表する社会起業家の一人駒崎弘樹さんのフローレンス創設に関わるストーリーです。現在では子どもの貧困や医療的ケア児の支援まで幅広く関わる駒崎さんが、子どもを取り巻く社会課題の一つ「病児保育問題」にどのように出会い、事業を立ち上げていったのかが書かれています。

 

阿部彩『子どもの貧困―日本の不公平を考える』

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

子どもの貧困―日本の不公平を考える (岩波新書)

  • 作者:阿部 彩
  • 発売日: 2008/11/20
  • メディア: 新書
 

日本の子どもを取り巻く社会課題はたくさん存在しますが、本書を読むと課題同士が複雑に絡まってしまっていることや、中でも「貧困」という問題が他の多くの課題につながる根っこになっていることなどを大きな視点から捉えることができます。ニュースなどでもしばしば取り上げられるようになった「子どもの貧困」問題ですが、なぜその解決が難しいのかを理解するためには問題の複雑さを知る必要がありますし、社会の歪みや失敗があった際に一番にそのしわ寄せが行ってしまうのが子どもであること、未来を支える子どもを社会全体で支えていく必要があることを本書を読んで一人でも多くの方に考えてほしいです。

 

いとうせいこう『「国境なき医師団」になろう!』

最後にご紹介するのは、世界的に有名なNGO団体「国境なき医師団」についてのルポルタージュです。作家のいとうせいこう氏が偶然寄付をすることになった出会いから体当たりの取材までを真摯な姿勢でまとめています。日本の子どもの貧困問題も深刻ですが、もちろん世界にもまだまだ大変な状況の国や地域はたくさんあります。各国の過酷な緊急支援の現場に関わる人たちがどのような思いで関わっているのか、そうした活動に私たちの「寄付」がどのように使われているのか、など普段なかなか知る機会のない世界について知ることのできる一冊です。

書評記事はこちら↓

 

daisuket-book.hatenablog.com