淡青色のゴールド

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書評『これからのリーダーシップ 基本・最新理論から実践事例まで』リーダーシップ理論・リーダー育成の研究を一冊で概観できる良書

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書評『これからのリーダーシップ 基本・最新理論から実践事例まで』リーダーシップ理論・リーダー育成の研究を一冊で概観できる良書

こんにちは。書評ブログ『淡青色のゴールド』へようこそ。本記事は堀尾志保・舘野泰一による「これからのリーダーシップ 基本・最新理論から実践事例まで」の書評記事です。

 

 

 

内容紹介

本書はリーダーシップに関する理論・研究を分かりやすく解説しながら、実際にそれらの研究成果を活かしてリーダーシップ教育・リーダーシップ開発を具体的に実践する方法や課題について書かれた本です。本書のタイトルは「これからのリーダーシップ 基本・最新理論から実践事例まで」となっており、本書の内容をより表しているのは副題の方です。基本的な理論から実践方法までを本書一冊で一気に概観することができる良書です。

 

Amazonの内容紹介より引用します。

 
「リーダーシップ」という言葉を聞いて、真っ先に思い浮かぶ人物は誰でしょうか。アメリカ公民権運動の指導者であるキング牧師、非暴力でインド独立を導いたマハトマ・ガンジー、アマゾン・ドット・コムを率いるジェフ・ベゾス…など、人それぞれに思い浮かぶ人物は様々でしょう。時代によりリーダーの代名詞は変わりますが、洋の東西を問わず、人々を率いるリーダーのあり方は関心を持たれ続けてきました。本書は、「最も研究されているけれども、最も解明が進んでいない領域」(Bennis & Nanus, 1985)ともいわれるリーダーシップ論に関し、これまでの研究の転換点、最新の研究潮流と合わせて、リーダーシップの発揮・教育に向けた具体的な実践方法について紹介していきます。
 

本書の構成

本書は以下のような構成となっています。(一部括弧書きは各節の中で扱われる理論を追記)

 

第1部 理論編
    第1章:リーダーシップ研究の変遷
        1. リーダーシップ研究の転換点
        2. 識者による偉人伝からはじまった 特性理論
        3. リーダーの「行動」に注目した 行動理論
        4. 「状況」に着目した 状況適合理論(コンティンジェンシー理論)
        5. リーダーとメンバーの「交換関係」に着目した 交換理論
        6. 組織を「変革」できる経営トップの特徴に迫った変革型リーダーシップ理論
    第2章:リーダーシップ研究の新潮流
        1. 優れたリーダーへ育つプロセスに着目したリーダーシップ開発論
        2. グループ全体で発揮する集合的リーダーシップ(シェアド・リーダーシップ、コレクティブ・ジーニアス、DACフレームワーク)
        3. 変わりゆくリーダーとメンバーのあり方(サーバント・リーダーシップ、オーセンティック・リーダーシップ、インフォーマル・リーダーシップ)
第2部 実践編
    第3章:リーダーシップ教育の実践
        1. リーダーシップ教育が求められる背景
        2. リーダーシップ教育の枠組み
        3. リーダーシップ教育の手法
        4. リーダーシップ教育の評価
        5. 本章のまとめ
    第4章:事例紹介
        CASE1 IBM(企業でのリーダーシップ教育事例1)
        CASE2 ジュピターショッピングチャンネル(企業でのリーダーシップ教育事例2)
        CASE3 立教大学経営学部BLP(大学でのリーダーシップ教育事例)
        CASE4 クレディセゾン 志賀正樹さん(個人のリーダーシップ発揮事例)
おわりに

 

オススメ度

★★★★★(5/5)

 

本書をオススメする人

本書は以下のような方にオススメです。

  • リーダーシップ理論・研究に関心がある方
  • 組織内で管理職の立場にある方
  • 役職としてのリーダーにはついていないが組織内でリーダーシップを発揮したい方
  • 組織内でリーダーシップ教育の実践、リーダー育成に関わる立場の方

私自身は講師として担当する研修プログラム内にリーダーシップの観点を取り入れる機会があり、改めて基本的な理論を整理し直すことを目的として読みました。

リーダーシップ論には「◯◯リーダーシップ」と呼ばれるものがたくさんあること自体は知っていたのですが、本書で解説されていた理論の中には知らなかったものもありましたし、私自身がこれまでに知っていた理論とそれ以外の特徴の違いや理論同士の関係性なども整理することができたことが収穫です。 

また、私は自身の研修プログラムの中に「サーバント・リーダーシップ」の視点を取り入れることを想定しており、その研究自体については『サーバント・リーダーシップ』の書籍を別途購入していたのですが、目的とする理論だけを知るのではなく、その特徴を正しく理解するためにはそれ以外の理論の特徴を知ることや様々な理論の中での位置づけなども理解しておきたいと考えておりました。この点については読む前に期待していた以上に本書は良い本でした。各理論の関係性を研究がなされた当時の社会状況なども踏まえながら解説されることで全体を非常によく理解することができたと感じています。

私の場合は先に目的とするリーダーシップ論をある程度決めた上で本書を読みましたが、それとは逆に、自分自身の状況や環境に合うリーダーシップ論が何かを探したいという方にもオススメです。様々な研究を研究者名や論文名などもある程度紹介してくれていますので、本書を文献リスト的に活用することも可能ですし、時間がないという方は本書だけでもそれなりにリーダーシップ理論をさらうことはできるかと思います。

 

リーダーシップ理論・研究について一冊で概観できる

これまでにもすでに何度か触れていますが、本書の最大の特徴はリーダーシップに関する理論や研究について本書一冊でまとめて知ることができる点です。

基本的には「本書の構成」で紹介している目次とそこに括弧書きで追記したものが本書で扱われているリーダーシップ理論です。 

  • 特性理論
  • 行動理論
  • 状況適合理論
  • 交換理論
  • 変革型リーダーシップ理論
  • リーダーシップ開発論
  • シェアド・リーダーシップ
  • コレクティブ・ジーニアス
  • DACフレームワーク
  • サーバント・リーダーシップ
  • オーセンティックリーダーシップ
  • インフォーマルリーダーシップ

など。さらに言えば例えば一番初めの特性理論を解説する箇所では特性理論と呼ばれる一連の研究の中での代表的な研究者の論文や主張が紹介されている、という構成になっております。もちろん要約した内容ですので一つ一つの理論の紹介分量は少ないのですが、本書の役割はその網羅性だと感じますし、理解しやすくすることを重視しすぎて元の研究をたどれなくなってしまうよりはインデックス的に活用できる点は個人的には好印象です。

 

理論の羅列ではなく理論発展のストーリーとして読めるから理解が深まる

また、単に理論を羅列するだけでなく、理論や研究が発展したり研究の焦点が変わっていくことをストーリーとして解説しているのでとても読みやすく理解もしやすかったです。紹介される理論は基本的に時代順に並んでいて、例えば「特性理論」から「行動理論」への移り変わりについては、次のように解説されます。

  • 特性理論とはそもそも優れたリーダーにはリーダーたる共通の特性があるとし、その特性を突き止めることなどを目指す研究
  • さまざまな研究がなされたが、研究ごとに特性は異なっており共通する特性は見いだせない、と特性理論としては挫折しかかっていた
  • それに加えて当時は1940年代から1960年代ぐらいで、世界の状況としては、世界的な戦後復興期であり産業界は非常に多くのリーダーを必要としていた
  • 必要なリーダーの数からもリーダー足る特性を備えた人材を探し出すだけでは量的に足りず、リーダーとしての望ましい行動を明らかにすることでリーダー需要を満たしていく必要があった
  • そうした背景からも人をリーダー足らしめるにはリーダーに相応しい行動があり、それを突き止め再現することでリーダーシップを発揮することができる行動理論という研究分野が発展していった

いかがでしょうか。

このように社会状況を踏まえながら解説が進んでいくため、一つ一つの理論の視点や特徴に納得感があり理解しやすかったです。

このように前の理論を超える形で新しいものが、、、という構成で次々に進んでいくと、最終的には「最新の理論だけを学べば良いんじゃないか」という疑問を感じてしまうものですが、「そう単純なものではない」という点にも配慮しながら書かれている点も良かったです。例えば上記で紹介した特性理論についても数十年後に改めて注目を集めている(特性を測定する手法等に進化がありより正確に、あるいは深く研究することができるようになったため)という点が触れられていたり、状況や環境、あるいは人によって合う合わないもあり、使い分けることも必要だという形で柔軟な書き方がされています。

「評価」研究が不十分な中でリーダーシップ教育へどう活かすか

個人的に読む前には期待していなかったけど、読んで良かったと本書の評価が一気に高まったのが「リーダーシップ教育」に関する研究についての紹介が充実していたことです。

先にも触れた通りそもそも私が本書を手にしたのは私自身が講師を務める研修プログラムの中に「リーダーシップ」に関する視点を取り入れることを目的としていたからです。当然そのプログラムの中では受講者に対して何らかのリーダーシップに関する知識の習得や実践を経験してもらうことが念頭に置かれています。本書のような本でまずは自分自身がさまざまな理論を体系的に知ることで、どのように伝えていくかを整理しようと考えていたのですが、「リーダーシップを伝え、育てる」ことを前提とした研究もなされているのであり、それについても解説されていたのでした。考えてみれば当たり前の話だったのですが、本書を読まずに適当なリーダーシップ論にあたりをつけて学んでいただけではその視点を落としたまま考えを進めるところでした。

リーダーシップ教育も前半で紹介された様々なリーダーシップ研究の発展やトレンドを反映している点や、具体的なリーダーシップ教育の設計手法なども解説されており、職場や教育現場でリーダーシップ研修などを企画される際にも非常に参考になります。「知識・スキル型」と「経験学習型」のそれぞれの特徴を解説しつつ主には「経験学習型」アプローチのプログラム設計や評価についてわかりやすくまとまっており、自身の研修プログラムにリーダーシップ論を取り入れたかった私としては一番参考になる部分でした。特に設計部分については、目標設定・実践・相互フィードバックによる振り返りなどのステップの作り方や各ステップで考えてもらうべき問いなどかなり具体的に解説されており、実際に現場で利用するワークなども本書を参考にしながら作成することができるレベルです。

また、リーダーシップ教育にはそれとあわせて、「教育効果が出ているかを評価する」という側面も必要になりますが、評価の観点ではまだまだ発展途上であり課題が多いという点も知ることができて良かったです。現状では受講者本人の主体的評価が中心であり、第三者評価の方法論についてはまだまだ研究途上であるということです。研修などのプログラムを企画する立場としてはこの点を意識しながら設計することは非常に重要なことでしょう。

リーダーシップは人それぞれ環境それぞれであることについての研修提供側と受講者側の両者の共通認識を丁寧に作りながら進めることが肝要なのだと感じます。

少しの不満は「実践事例」の取ってつけた感

ここまで紹介してきたように私は本書に概ね満足しているのですが、最後の第4章だけは少し不満でした。最後は「実践事例」ということで実際の現場でのリーダーシップの発揮や育成に関する事例が紹介されます。企業や教育現場、個人としてのリーダーシップ発揮事例など複数の視点から事例がピックアップされていることは好印象なのですが、3章までとのつながりをあまり感じられませんでした

1〜3章のどの理論や視点がどのように活かされているかについて簡単でも良いので解説が付け加えられながら記述されていると良かったのですが、その点については「振り返りながら読んでみましょう」と読者に丸投げされています。読者に対する教育的な観点からの丸投げであれば良いのですが、残念ながらそうは感じられませんでした。おそらくですが、各事例は本書のために書き下ろされたものではないのでしょう。各事例では様々な理論の中から適切なものを選ぶという視点や、特定の状況や環境だったから各アプローチが活きたという本書がそれまで繰り返し伝えてきたような視点はなく、取ってつけたものに感じてしまい(それぞれの事例はそれなりに面白いのですが)少しもったいないと感じる部分でした。 

事例紹介の文章はそのままに、各事例紹介の後にでも「解説編」として「◯◯の部分は◯◯理論の視点が活かされています」「◯◯理論が活きているのはこの組織が◯◯な特徴を持ち、◯◯な状況だったからといえます」を付け加えるなどの丁寧さがあるとより良かったと感じます。もし改訂がなされることがあれば期待したい部分です。

 

まとめ:リーダーシップ教育、リーダー育成に関わる立場の方は最初の一冊としてぜひ手にすべき

最後の事例部分で多少の不満はありましたが、それでも全体的には十分に良書です。リーダーシップ論について概観したい方にオススメできるのはもちろんのこと、自組織でリーダーシップ教育・開発やリーダー育成に関わる立場にある方にもオススメできます。紹介されている事例の中でそのようになっていなかったのがつくづく残念ではあるのですが、まずは本書を読んでさまざまなリーダーシップ論に触れてみることから、自分自身や自身が所属する組織におけるリーダーシップのあり方を深めていくというアプローチは有効なものだと感じます。

 

 
 

『これからのリーダーシップ 基本・最新理論から実践事例まで』を読んだ方にオススメの本

最後に本書を読んだ方や興味を持った方にオススメの本をご紹介します。

 

ロバート・K.グリーンリーフ/金井寿宏『サーバント・リーダーシップ』

私自身が本書とともに読み進めており、軸にしたいと考えているリーダーシップ論でもあるのですが、多くの方にオススメできる内容です。本書の内容自体は1970年代に提唱されたものですが、非常に示唆に富む内容であり、時代を超え、むしろ昨今の不透明性・複雑性の増している社会状況の中で求められるようになっているリーダーシップスタイルだと感じます。『これからのリーダーシップ』が体系的に整理された容易に読める本であったのに対して、本書は500ページを超える大作であり、著者の長年の研究や講演などをまとめた書籍であり一読して体系的な理解をするというよりは少しずつ噛み締めたり、感じ取ったりすることが必要な本です。まだまだ私自身も理解が十分とは言えませんが、『学習する組織』のピーター・センゲが「リーダーシップを本気で学ぶ人が読むべきもはただ一冊、本書だけだ」とまで言うことには納得できる深さのある内容です。

 

フレデリック・ラルー/鈴木立哉『ティール組織』

昨今のリーダーシップ研究では旧来のカリスマ的なリーダーシップのように特定の個人が発揮するものではなく、組織に所属する全員が自分なりに発揮していくものという流れが強まっています。そうしたことを組織全体のレベルで考えていくと、リーダーシップという枠組みだけではなく、組織そのものについても考えざるを得なくなるのですが、こうした文脈で組織について考える上ではやはり『ティール組織』は外せません。マネジメントやリーダーシップについて学ぶたびにティール組織で述べられている様々な視点には各分野での研究成果や視点が様々に取り入れられていることを強く感じます。

 

エイミー・C.エドモンドソン/野津智子『チームが機能するとはどういうことか』

内容はまさにタイトルの通りで、チームビルディングについての本なのですが、内容としては主にチームを適切に機能させていくために組織のリーダーが果たすべき役割は何かという点が様々な観点から解説されています。リーダーシップ論は視点としてはリーダーとしての個人の視点から考えることが多いですが、視点を逆にして組織の側を主としてリーダーの役割を捉え直すというのが本書のアプローチです。

以前に書評を書いておりますので詳しくは以下の記事をお読みください。

 

伊賀泰代『採用基準』

マッキンゼーで採用担当をしていたという経歴を持つ著者による本。リーダーシップ自体の本ではないですが、分かりやすいです。本書で紹介されるのはどちらかというと旧来型のリーダーシップに近しいと感じるところもあるのですが、それでも「リーダーシップは役職としてのリーダーについている人だけが発揮するものではなくメンバーも発揮するべきもの」ということを非常に具体的に分かりやすく解説してくれます。私自身会社員時代に本書を読んで、リーダーシップについての視座が一気に高まったと感じる本でオススメできる一冊です。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。