淡青色のゴールド

経営コンサルタントのdaisuketによる書評や読書についてのブログです

書評『さよならは小さい声で』すてきなひとたちと過ごすていねいな暮らし

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書評『さよならは小さい声で』すてきなひとたちと過ごすていねいな暮らし

こんにちは。書評ブログ「淡青色のゴールド」へようこそ。本記事は松浦弥太郎さんのエッセイ『さよならは小さい声で』のレビュー記事です。

この記事の下書きを書いたのは出張に向かう新幹線の中でした。読み終わって書評を書きたい本はたくさん溜まっているんだけど、ゆっくり考えて書く時間がなかなか取れずに慌ただしく新幹線の中で暇を見つけて書いていました。そんな、慌ただしい日々を落ち着けたいときにぴったりの一冊。当時も忙しい日々に埋もれながら本書を読んで心を落ち着けていました。

 

 

どんな本か?

「上品な暮らし」を追求する雑誌『暮しの手帖』を編集長として引っ張ってきた松浦弥太郎さんのエッセイ集。 松浦さんは非常にたくさんのエッセイを書いていらっしゃいますが、本書のテーマは「すてきなひと」です。「ていねいな暮らし」を提唱する松浦さんが日々の生活の中で出会う、そして思い出の中にのこる”すてきなひと”にまつわるエピソードが紹介されています。他の松浦さんの著作と同様に、優しく温かな文章で構成されており、読んでいると心が落ち着いて、慌ただしい毎日の時間の進みが少しゆっくりになるような、そんな気がしてくる素敵な本です。

新型コロナウィルスの影響もあり、いつも通りの生活ができない昨今。親しい友人や大切な人にもなかなか気軽には会いにくいことはとても辛いことです。すぐに生活が元通りにはなりませんが、大切な人たちに会うということの素敵さを自分の中でじっくりと温めて次の機会を待ちたいですよね。自由には、気軽には会いにくいそんな今だからこそ、本書を読んで自分の身の回りの”すてきなひと”に思いを馳せてみませんか?

著者の松浦弥太郎さんはどんな人か?

松浦さんの名前は前々から知っていたのですが、特に個人的に興味が増したのはWebメディアの「くらしのきほん」を立ち上げた頃です。当時私はWeb系の事業会社に勤めていたので、長く雑誌業界で活躍された松浦さんがどのようなWebメディアを運営するのだろう、と気になっていました。

そう、元々松浦弥太郎さんという方は雑誌業界の方です。前述の通り『暮しの手帖』の編集長を務めていらっしゃいました。『暮しの手帖』は朝ドラの『とと姉ちゃん』で創刊ストーリーが描かれた生活総合雑誌で創刊はなんと1946年です。戦後復興から高度経済成長、そしてバブル経済と平成、令和へ…と戦後日本の生活面を彩ってきた日本を代表する雑誌の一つです。松浦さんが編集長を務めていたのは2005年からの9年間

政治的には小泉政権真っ只中で郵政選挙が行われたのが2009年です。小泉劇場という言葉もありましたが、政治のワイドショー化が徐々に進み、私たちの日々の生活感覚との乖離が進んでいった頃でした。松浦さんはそんな中でも日々の生活を大切にしていくこと、一日一日を”ていねいに”暮らすことを提唱し、多くの共感を得てきました。

読んだきっかけ

そんな松浦さんのことを暮しの手帖退任とWebメディア立ち上げの頃(2015年)から注目はしていたのですが、その後も1年程はほしい物リストに突っ込んだままになっていました。ちょうどその頃私は初めての転職を経験し、充実しつつも目まぐるしい程に忙しい毎日でした。ご縁があって憧れていた方が立ち上げた会社に参画することができたのですが、なかなか成果が出せず焦ってもいました。大好きな読書の時間を取る余裕もなく、余暇どころか睡眠時間も削りながら働きまくる毎日が続いていたのです。本書を手にしたのはそんな日々の中でした。

そんな中で出張の隙間時間にふと立ち寄った本屋で見かけたのが本書でした。松浦さんの著作の中でほしい物リストに入れていたのは実は別の本だったのですが、「いますぐ読みたい」「今こそ読むべきだ」と強く感じそのまま購入しました。 

200ページ弱の文庫本です。文字も大きいので1時間もかからずに読めます。忙しい毎日でしたが、移動中の電車の中ですぐに読むことができました。

「上品な暮らし」とか「ていねいな暮らし」を標榜する松浦さんの本をそんな慌ただしい読み方していいのかな、とも思うのですが、きっと良いのです。むしろそういう忙しい毎日の中で読むからこそハッと気づくことも多いのではないかと思います。

 

松浦さんの「ていねいな暮らし」は人をよく見ることから

通して読んでみての一番の感想は松浦さんという人は「よく人を見る人だなぁ」ということです。この人の「ていねいな暮らし」というのは、自分の周りにいる人たちの言葉とか、所作とか、その他さまざまなモノからの影響を多分に受けています。

影響を受けている、というと受動的な言い方だけど、たぶんそれはとても主体的な姿勢です。

瞬間瞬間をていねいに過ごすからこそ相手の言動が目に入り、自分を省みることにもつながるんだろうと思います。それに、その影響を受ける相手が言葉とか、所作だけでなく「その他さまざまなモノ」というのがまた、ていねいさの所以というか何たるかというか、というところなんじゃないかと思うのです。

つかみどころがないということではなくて、身の回りにある”その他さまざまなモノ”に気づき受け止めるだけの余裕がある、ということなのではないでしょうか。

 

人間関係にルールを

挨拶をする
よく褒める
手紙を書く
感想を伝える

などなど。

松浦さんは人間関係についてのルールをたくさん持っています。これとても素敵なことだなと感じました。人間関係を大切にする、と言うのは簡単ですが、ただそう言うだけではとても曖昧で、たぶんまったく大切にできていないのですよね。

自分が相手をどう大切にしたいのか、どういう関係を築いていたいのかを意識するというのは気持ちの良いことだと思います。まずは松浦さんのように日々の人との関わりの中で取りたい「行動」を決めていくことが大切なのではないかと思います。

 

その使い方で「お金」は喜ぶか

そして人間関係の話からの流れでお金の話が出てくるのも面白いポイントでした。少し引用します。

 まず、お金の使い方について投資(将来の利益のための資金投下)、消費(生活に必要なものを買うこと)、浪費(物欲を満たすためだけの行為)の違いを見極めましょう、と。

ここまではよくある話ですね。その見極め方と、捉え方が松浦流です。

見極めのコツはお金を使うときに「こんな使い方でお金は喜ぶだろうか」と自問すること、だそう。

なにごともそうだけれども、喜んでもらえれば、必ず感謝をされる。悲しませれば、その悲しみは必ず自分に返ってくるだろう。
お金の使い方は人間関係に似ているのである。 

 なるほど。ていねいに接する相手は人だけではありません。「金は天下の回りもの」なんて言いますが、ていねいに扱われたお金が巡る社会になったらそれは多分とても素敵なことだろうと思います。

 

素敵な言葉と出会える本

素敵な言葉がとてもたくさん見つかるエッセイなのですが、本書の中で私が特に好きだなと感じたのが以下の言葉です。

心の歳を取るということは、自分の瞳の輝きや色をさらにきれいに磨くこと。身体の衰えを止めることはできないけれども、心の衰えは止めることはできる。どんなに歳を取っても心というものは磨くことができて、それは自分の瞳に現れる。
年齢を重ねる、または心の歳を取るということは、一歳、そして一歳と、美しくなるということ。人は美しくなるために生きている。人は瞳を磨くために生きていると思った。

私が本書を読んだ年は初めての転職を経験した年であり、ちょうど30歳になる年でした。自分の歳やこれからの人生のことを考える機会が多くなっていた時期でした。人生のことや歳のことを考えるとどこか焦るような気持ちを感じてしまうことが多かったのですが、本書を読んで出会ったこの素敵な言葉のおかげで歳を重ねていくことが楽しみになりました

この本を手にしたのは本当に偶然でしたが、自分がほしい言葉に出会うことができた、そう思える幸せな読書体験でした。

きっと、人によって、瞬間によって見つける言葉も違うのだろうと思います。こういう素敵な出会いをしっかり受け止めて楽しんでいくことが「ていねいな暮らし」なのかもしれないと思うので、忙しい毎日に飲み込まれそうだと感じたときにはまた本書を手にしたいと思っています。 

忙しい毎日少し疲れたな、と感じる方がいらっしゃればぜひ手にとって見て欲しい一冊です。

『さよならは小さい声で』を読んだ方にオススメの本

最後に本書を読んだ方や興味を持った方におすすめの本をご紹介します。

松浦弥太郎『100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート』 

『さよならは小さい声で』の中でもいくつか松浦弥太郎さん自身が持っている人間関係におけるルールが書かれていますが、松浦さんという人はその他にもたくさんのルールを持っています。全部で「100の基本ルール」を持っているそうです。この『100の基本』ではそんなていねいな暮らしの基本が紹介されます。このうちのいくつかを自分も真似てみるというのも良いと思いますし、本書を読んだ上で自分なりの100の基本を考えてみるというのも楽しいと思います。 

 

西村佳哲『自分をいかして生きる』

松浦さんの本は”ていねいな暮らし”を提唱し「生活」を中心としている一方で西村さんは「働き方研究家」と名乗っており、「働く」中での人との関わり方や自分のあり方について思索をしていらっしゃいます。もちろん松浦さんがいう生活は仕事から切り離された浮世離れしたものではないのですが、「働く」「仕事」という考えてみる本書も視点が変わってとても面白いのでオススメです。

最後までお読みいただきありがとうございました。