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火星を扱ったSF小説のオススメ7選

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火星を扱ったSF小説のオススメ7選

こんにちは。書評ブログ「淡青色のゴールド」へようこそ。本記事は「火星を扱ったSF小説のオススメ7選」と題し、主に火星が舞台となっているSF小説作品をご紹介します。SF好きな私がみんなにもっとSF小説を読んで欲しい!という想いで選びました。

 

火星を扱った作品が多いのはなぜか

火星は太陽系の太陽に近い順では3番目の地球に続く4番目の惑星で、お隣の惑星です。地球と同じく岩石でできた惑星であり、主に二酸化炭素で構成される薄い大気を持っています。こうした地球と似た特徴・環境を持つことから昔から様々な作品で扱われてきました。なお太陽系の惑星で言えば、太陽により近い側のお隣である金星の方が平均距離では地球に近いですし(公転軌道の関係で平均距離で言えば実は水星が一番近いという話もあります)、金星も岩石でできた地球と似たような惑星という特徴としては強力で、地球の姉妹惑星と呼ばれることもあります。が、SF小説などの舞台としては圧倒的に火星が扱われることが多いです。色々理由はあるのだと思いますが、一番には端的に言って金星の環境が過酷すぎて生物の居住環境として想定しにくいという点が挙げられるかと思います。金星には火星の薄い大気とは異なり、二酸化炭素による分厚い大気があります。火星がSFで扱われる際には大気が薄いという問題との格闘が描かれることも少なくないですが、二酸化炭素の層が厚すぎるのも問題です。地球でも近年二酸化炭素の温室効果による温暖化問題の危険性が指摘されていますが、まさに金星はその効果が非常に強く出ている環境となっているのです。金星の表面温度は昼でも夜でも摂氏460度で、これは太陽に一番近い水星よりも高い温度となっています。地球人が植民を試みる話にしろ、異星人を想定するにしろあまりにも過酷すぎて想定が難しいのでしょう。そういった理由から異星人ものにしろ、植民ものにしろその舞台としては火星が選ばれることが多いのではないでしょうか。

それでは前置きが長くなりましたが、ここからは私がオススメする火星を扱った小説を7作品ご紹介していきます。掲載順は特にランキングという訳ではありませんので、好みに合いそうなものを一つでも読んでもらえると嬉しいです。

火星年代記(レイ・ブラッドベリ)

まず最初にご紹介するのはレイ・ブラッドベリによる『火星年代記』です。人類による火星移住が徐々に進んでいく様子が、年代記形式の連作集のような形で構成されています。「2030年一月 ロケットの夏」「2030年二月 イラ」「2030年八月 夏の夜」…といった形です。この年代記、という形式自体にワクワクするという方も少なくないのでは。ちなみに現在出版されているのは「新版」なのですが、1963年に出版された「旧版(同じ小笠原豊樹訳のもの)」では「1999年一月 ロケットの夏」となっており、新版への改訂にあたって各話の年代が31年ずつ更新されています。執筆当初に想定していた「未来」がすでに過去のものとなってしまう、というのは近未来を描くSF作品には致し方ない部分ではありますが、本作品の魅力は時代が変わっても、この先2030年を過ぎたとしても色褪せないでしょう。元々ブラッドベリは幻想小説家と称されることもある作家で、物理学や数学、あるいは他の様々な科学や技術を細かく組み上げるハードSFの作風ではありません。SFというのはサイエンスフィクションの略語ですが、本作はいうなればスペースファンタジーといった印象で、本作品で描かれる火星やその植民の様子も科学的な厳密性よりも、幻想的だったり叙情的な雰囲気が魅力の作品です。作品全体の雰囲気としてはショートショートで有名な星新一さんの作品とも通じる部分がありますので(星新一がレイ・ブラッドベリから影響を受けているようです)、SFをあまり読んだことがなく、SFって難しそう、と苦手意識を持っているような方にもあまり構えずに気軽に手にしてみて欲しい作品です。

Amazonの商品紹介から引用します。

火星への最初の探検隊は一人も帰還しなかった。火星人が探検隊を、彼らなりのやりかたでもてなしたからだ。つづく二度の探検隊も同じ運命をたどる。それでも人類は怒涛のように火星へと押し寄せた。やがて火星には地球人の町がつぎつぎに建設され、いっぽう火星人は…幻想の魔術師が、火星を舞台にオムニバス短篇で抒情豊かに謳いあげたSF史上に燦然と輝く永遠の記念碑。著者の序文と2短篇を新たに加えた新版登場。

火星の人(アンディ・ウィアー)

続いては映画『オデッセイ』の原作小説『火星の人』です。火星探査の宇宙飛行士たちのうち、主人公のマーク・ワトニーは事故によりたった一人で火星に取り残されてしまいます。自らの生存を地球に伝え、地球からの救出が来るまで火星で生き残るためのワトニーの奮闘が描かれます。ワトニーは生き残るために、必要なカロリー数を計算したり、植物を育てるために宇宙船やローバーを改造するなど化学や物理学、数学に植物学とさまざまな科学的知識を駆使していくといった形で、『火星年代記』とは打って変わって科学的な考証を重視した「火星でのサバイバル」というテーマ一点突破のハードSFと呼べる作品です。とはいえ、堅苦しさや読みにくさはまったくありません。何度も訪れる困難な場面を創意工夫で切り開いていく知識や技術はSF的でありながらも、主人公ワトニーが非常に明るく、ユーモアに溢れていますし、登場する技術も突飛なものは登場しませんのでSF初心者にも自信をもってオススメできます。単純にエンタメ小説としてレベルが高いのでSF小説という括りを抜きにしてもオススメしたい一作ですね。

Amazonの商品紹介から引用します。

有人火星探査が開始されて3度目のミッションは、猛烈な砂嵐によりわずか6日目にして中止を余儀なくされた。だが、不運はそれだけで終わらない。火星を離脱する寸前、折れたアンテナがクルーのマーク・ワトニーを直撃、彼は砂嵐のなかへと姿を消した。ところが――。奇跡的にマークは生きていた!? 不毛の惑星に一人残された彼は限られた食料・物資、自らの技術・知識を駆使して生き延びていく。映画「オデッセイ」原作。

レッド・マーズ(キム・スタンリー・ロビンスン)

続いてご紹介するのはキム・スタンリー・ロビンスンによる宇宙植民小説の傑作『レッド・マーズ』です。宇宙植民とは、地球外に人類が恒久的に居住可能な環境を構築することを目指す動きの中でも特に地球以外の惑星の環境を人類が移住し自給自足可能な環境に変えていくことを指します。つまり『レッド・マーズ』は火星への植民をテーマにした小説です。火星植民計画を推進するための物資や機材に続く先遣隊として派遣されることになったのは全世界から厳選された100人の科学者。様々な専門分野をもった科学者たちが街をつくり、大気や、植物や水を生み出すために奮闘していきます。『火星の人』は「火星でのサバイバル」というテーマの一点に集中して話が進んでいきましたが、『レッド・マーズ』は必ずしも科学的、技術的な観点から火星植民という点だけに集中して話が進んでいくわけではありません。100人の科学者たちは100人いればそれぞれに信条や野望があったり、彼ら彼女らを送り出した地球の国や企業など様々な勢力の思惑もあります。政治的な対立や諍いなども含めて非常にカオスに物語が進んでいきます。純粋に科学的、技術的に取り組んでいけばもっとスムーズに進むはずなのに、ともどかしく感じる部分もありますが、本作で描かれる対立は単純な善悪ではないため、むしろ非常にリアリティを感じます。『レッド・マーズ』だけでも上下巻で約1,000ページ、さらにその後シリーズは『グリーン・マーズ』『ブルー・マーズ』とすべて上下巻でたっぷり続いていきますのでかなり読み応えがあります。『レッド・マーズ』がネビュラ賞と英国SF協会賞・星雲賞、『グリーン・マーズ』がヒューゴー賞・ローカス賞、『ブルー・マーズ』もヒューゴー賞、ローカス賞とSF各賞を受賞しており評価も非常に高い作品ですし、テラフォーミング(宇宙植民)ものの小説としては最高傑作といえる作品だと思いますので非常にオススメです。

Amazonの商品紹介から引用します。

●アーサー・C・クラーク絶賛――「驚愕すべき1冊。これまで書かれた中で最高の火星植民小説だ。21世紀の植民者たちにとって必須の書となるだろう。」

【ネビュラ賞・英国SF協会賞・星雲賞受賞作】
人類は火星への有人飛行を成功させ、その後無人輸送船で夥しい機材を送り出した。そして2026年、厳選した百人の科学者を乗せ最初の火星植民船が船出する。広漠たる赤い大地に人の住む街を創るのだ。惑星開発めざし前人未到の闘いが始まる。NASAの最新情報にもとづく最高にリアルな火星SF。

火星へ(メアリ・ロビネット・コワル)

続いては今回ご紹介する作品の中では一番新しい作品です(日本語訳版の出版は2021年7月)。『火星へ』というタイトルの通り、火星への進出、つまり植民が最終的なゴールになっているという点では先にご紹介した『レッド・マーズ』と共通していますが、本作で描かれるのは植民よりもかなり前の段階で、初の火星有人探査ミッションです。しかもその年代は1961年という設定。SFというと未来のことが描かれるイメージが強い方も多かと思いますが(私はそういうイメージでした)、本作は「もし1950年代に(恐竜絶滅の原因になったのと同じような)隕石の衝突があり、人類は宇宙への進出を模索しなければならなくなっていたとしたら、宇宙開発はどのように進んでいったのだろう」という歴史のif(もしも)を考える歴史改変SFです。史実ではアポロ計画による月到達は1969ですが、本作のスタートは1961年。史実よりも早い段階で月よりも遥かに遠い火星を目指すことになります。その困難に立ち向かう様子を史実との違いも意識しながら楽しんでいくことができるのは実際の歴史を下敷きにしている歴史改変SFならではの魅力です。さらに本作品は出版年も新しく、著者も女性であり、時代に即した作り方がなされています。主人公は女性宇宙飛行士で、(1950年代〜60年代の現代よりも根強い)女性差別に苦悩する様子が描かれていたり、人種差別や精神疾患などのマイノリティ性への言及があったりといった形で科学的考証だけでなく、ポリティカル・コレクトネスへの意識も強く感じる新時代のエンタメ小説として出来が良い作品です。本作はシリーズ物となっているため、できれば一作目の『宇宙へ』から読み始めることをオススメします。(『宇宙へ』はヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞とSF・ファンタジー作品に贈られる主要3賞を同時受賞したという点でも注目されました)

Amazonの商品紹介から引用します。

一九六一年。人類は月面基地と宇宙ステーションを建設し、つぎは火星入植を計画していた。〈レディ・アストロノート〉として知られる女性宇宙飛行士エルマは、航法計算士として初の火星有人探査ミッションのクルーに選ばれ、悩んだ末に三年間の任務を引き受けるが……。改変歴史宇宙SF第二弾 解説/鳴庭真人

『宇宙へ』については別途書評も書いておりますので良ければお読みください。

 

daisuket-book.hatenablog.com

 

宇宙戦争(H・G・ウェルズ)

続いてご紹介するのはウェルズの『宇宙戦争』。2005年にスピルバーグ監督が映画化した『宇宙戦争』の原作作品です。本作の出版はなんと1898年。著者のウェルズは『海底2万マイル』『15少年漂流記』などを書いたジュール・ヴェルヌとともに「SFの父」「SFの巨人」などと称されるSF界の巨匠で『宇宙戦争』もSF界に燦然と輝く古典的名作です。そのテーマは「宇宙人襲来」。つまり地球を侵略しにきた火星人との戦いです。現代の感覚では火星にはいわゆる宇宙人はいない、というのは常識になっていると思いますが、本作が出版された100年以上前にはそうではなく、本作がラジオドラマ化した際にそのあまりのリアリティに本当に火星人が侵略しにきたと信じてしまったという逸話が残っています(これは事実ではなかったという話も出てきていますが)。また「火星人」といえばタコ足で大きな頭をしたイメージが思い浮かぶ方もいらっしゃるかもしれませんが、そのイメージを広げたのは本作の影響だと言われています。非常に古い作品ではありますが、そのストーリーやメッセージは今でも十分に楽しむことができる名作です。

Amazonの商品紹介から引用します。

謎を秘めて妖しく輝く火星に、ガス状の大爆発が観測された。これこそ6年後に地球を震撼させる大事件の前触れだった。ある晩、人々は夜空を切り裂く流星を目撃する。だがそれは単なる流星ではなかった。巨大な穴を穿って落下した物体から現れたのは、V字形にえぐれた口と巨大なふたつの目、不気味な触手をもつ奇怪な生物―想像を絶する火星人の地球侵略がはじまったのだ。

火星のプリンセス(エドガー・ライス バローズ)

続いての作品も初版は1917年と非常に古い作品です。タイトルの通り火星を舞台にした小説ではありますが、どちらかというとヒーローがヒロインを助けるために冒険するアメリカのヒーロー小説という感じですね。ただし、火星の飛行船など登場する技術の背景となる理論などは科学的な考証がなされており、しっかりとSFをしている作品でもあります。本作が出版された20世紀前半というのは時代的には西部劇が流行していた時代でもありますので、西部劇的なノリを火星を舞台に繰り広げた作品というところでしょうか。今読むと感覚の異なる部分も少なくないかとは思いますが、それでもさまざまな惑星を冒険するというのもSFの一大ジャンルであり、その初期を彩った作品の舞台としてはやはり火星が選ばれているというのは面白いことですよね。この100年の間に火星について判明してきている事実もたくさんありますので、作品の中で描かれる火星がどのように異なるのか他の作品と読み比べてみるのも面白いかと思います。

Amazonの商品紹介から引用します。

南軍大尉ジョン・カーターは、ある日忽然として火星に飛来した。そこでは4本腕の獰猛な緑色人、地球人そっくりの赤色人などが戦争に明け暮れていた。縦横無尽の活躍の果て、彼は絶世の美女デジャー・ソリスと結ばれるが……。本集には『火星のプリンセス』『火星の女神イサス』『火星の大元帥カーター』を収録。旧版(分冊版)の、武部本一郎画伯による歴史的なカバーイラスト・口絵(カラー)、本文イラスト(モノクロ)を全点載録した。訳者あとがき=厚木淳

火星のタイム・スリップ(フィリップ・K・ディック)

最後にご紹介するのはフィリップ・K・ディックによる『火星のタイム・スリップ』です。ディックといえば一番の有名作は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』、タイトルが非常に印象的な作品なので読んだことがなくても聞いたことがあるという方は少なくないのではないでしょうか。ディックは他にも『流れよわが涙、と警官は言った』などオシャレなタイトルの作品が多いのですが、それらの印象的なタイトルに比べると『火星のタイム・スリップ』というのはあまりにシンプルで地味な感じもするのですが、ディックファンの中では本作をディックの最高傑作に挙げる人も少なくありません。本作も『レッド・マーズ』のように植民された火星が舞台になるのですが、火星の設定やテラフォーミングのための科学技術の考証にはまったく主眼が置かれておらず、権力者との戦いが繰り広げられるあらすじ自体は火星が舞台である必要はない感じもあるのですが、タイトルにもある通り時間に関する特殊能力を駆使しながらゴチャゴチャと進んでいくディックらしい小説です。ディックはSF好きの中でもファンの多い作家ですので、SFに興味を持ってみたら一度は読んでみていただきたい作家ですし、時間をテーマに扱うのもSFとしては一大ジャンルですので、火星が舞台となっている本作をオススメとして選んでみました。

Amazonの商品紹介から引用します。

火星植民地の大立者アーニー・コットは、宇宙飛行の影響で生じた分裂病の少年をおのれの野心のために利用しようとした。その少年の時間に対する特殊能力を使って、過去を変えようというのだ。だがコットが試みたタイム・トリップには怖るべき陥穽が……フィリップ・K・ディックが描く悪夢と混沌の世界。

まとめ

以上、本記事では『火星を扱ったSF小説のオススメ7選』ということで、火星が舞台となっていたり、火星をテーマにしたSF小説からオススメの作品をご紹介しました。一口にSFといっても非常に様々な種類があるということを感じてもらうためにあえて「火星縛り」で選んでみたのですが、それでも幻想的な作品から非常に細かく科学考証をしている作品まで様々ですし、宇宙進出、惑星への植民から異星人との戦いにタイムスリップまでさまざまな切り口があって面白いですよね。想像力が刺激されて面白いですよ、SF!一つでも興味を持てる作品があれば嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。