淡青色のゴールド

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戦争と近現代日本について考えられるようになるために私が読んだ本【毎年更新】

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戦争と近現代日本について考えられるようになるために私が読んだ本【毎年更新】

こんにちは。書評ブログ「淡青色のゴールド」へようこそ。本記事では「戦争と近現代日本について考えられるようになるために私が読んだ本」と題し、私自身が自分なりに考えられるようになるために読んでよかったと思えて、そして皆さんにも読んでほしいと感じた本をご紹介します。

 

 

この記事を書こうと思ったワケ

色々な物事をもっと知り、もっと考えて、世界や日本で起こることや自分が身の回りで目にする様々なことに自分なりの視点で向き合えるようになりたいと思っています。基本的に知的好奇心は旺盛な方でさまざまなことに対して知りたい、考えられるようになりたいと思っていて、だからこそ色々な本を読んでいるという部分もありますし、このブログをやっていることにもつながっています。(単に楽しみとして、エンタメとして読みたい気持ちも、選ぶ本も多いですが)

そして世の中にはさまざまな分野や物事がありますが、その中でも「戦争」というのは社会の中で起こる出来事の中でも特に難しくて、自分なりに考えられるようになりたい大きなテーマです。そして自分が生まれ、育った日本という国における戦争の歴史や、日本人としての戦争との向き合い方ということも考えられるようになりたいし、考えを言葉にできるようになりたいと思っています。

これまでに色々な本を少しずつ読んだり、本以外にも人と話したり、色々見聞きしたりをしてきていますが、まだまだ自信をもって自分の考えがあるとは言えませんし、言葉にすることも難しいと思っています。もちろん今後も勉強はし続けていくつもりですが、すでに自分自身の年齢は30代半ばとなり「いい大人だな」とも思っていて、考え、言葉にすることにまだ自信を持てない自分に焦りを感じたりもしています。

ただ、このような「戦争」や「(近現代の)日本(と戦争の関係)」について考えられない・話せないという焦りや自信のなさのようなものは、自分だけに限った話ではないとも感じています。そのように感じている人は自分以外にもたくさんいるし、わからないということに対して諦めてしまう人もいると思いますし、幸運なことに平和な日本に生まれ育つことができた中で「自分には関係ない」と無関心になってしまう人もいるのではないかと思います。

それではいけない、と思いつつも、私が自分なりの考えをしっかりと持って、それを言葉にできるようになるまでにはまだまだ時間がかかってしまうかもしれないので、まずは自分が様々な本を読んで勉強し、考えを深めたり巡らせたりしていく過程自体を共有しつつ、同じようにこのテーマを考えられるようになりたいと思う方に対してのきっかけになればと思い、この記事を書くことにしました。

「戦争はなくすべきである」といつまでもそんな当たり前の言葉だけで止まらず、「なぜ起こってしまうのか」「何がいけないことなのか」「戦争や紛争やテロのニュースに触れたときにどのように捉えればいいのか」「日本の戦争の歴史と現在をどう捉えればいいのか」「自分ができることは何か」そんな、色々なことをしっかりと考えられるようになっていきたいです。

2021年8月記事公開時の5冊

今後もずっと勉強し続け、考え続けていくテーマだと思いますので、少しずつということで、まず今回ご紹介する本は5冊と少なめにしました。毎年8月に少しずつ本を追加しながら更新していく記事にしたいと思います。

『この国のかたち』(司馬遼太郎)

司馬遼太郎は自身の太平洋戦争への従軍経験から「一体なぜ?いつからこうなってしまったのか?それは必然だったのか?」という疑問を持つようになり、それが探究と執筆活動の源泉になっていたと語っています。

さまざまな小説作品の中でも、その考えや視点が織り込まれていますが、戦前日本への「なぜ?」という疑問に対しての司馬遼太郎自身の大きな一つなんだろうなと感じるのが大日本帝国憲法における「統帥権」の問題です。

統帥権とは、世界大百科事典によると、

軍隊の最高指揮権。 これは君主国,共和国を問わず国家の元首である君主,大統領あるいは首相が掌握するのが通例。 日本の場合,太平洋戦争敗戦時までは天皇にあった。

統帥権とは - コトバンク

というもので、大日本帝国憲法における天皇大権の一つです。

大日本帝国憲法は天皇主権の憲法ではありつつも、さまざまな事柄は各国務大臣が天皇を輔弼することになっていました。しかし、作戦や用兵などの純軍事的な事柄については統帥部(陸軍参謀、海軍軍令部)の事項とされ、国務大臣が輔弼すべきものからは独立しているという考えが生まれるようになったことが、戦前昭和の軍部の暴走の背景になったということが語られています。

さすが司馬遼太郎だなと思うのは、単に帝国憲法の規定や当時の制度的な解説、あるいは当時の軍部と政治家の関係だけでなく、幅広い視点と歴史的な文脈からこのテーマを捉えていることです。例えば「統帥権」という言葉や考え方についても帝国憲法の規定以前に、そもそも幕末の尊皇攘夷期の天皇と将軍の関係などから「軍事を司るのは誰か」という議論や概念が生じてきたことや、その流れの中で憲法ができたこと、そして軍部の文化や規律を作った人間たちが歩んできた歴史などを丁寧に紐解きながら解説をしていきます。

『この国のかたち』という本自体は、必ずしも戦争やその前後の日本だけをテーマにしたわけではなく、司馬遼太郎が広く「日本」というテーマについて語るエッセイ集で、全6巻で刊行されています。

「統帥権」以外のテーマもどれも面白いのですべてオススメしますが、特に統帥権について読んでみたい方は四巻を手にしてみてください。

Amazonの商品紹介から引用します。

『文藝春秋』の巻頭随筆として十年にわたり連載された「この国のかたち」。長年の間、日本の歴史からテーマを掘り起こし、香り高く稔り豊かな作品群を書き続けてきた筆者が、この国の成り立ちについて研ぎ澄まされた知性と深く緻密な考察をもとに書き綴った歴史評論集。その1~6巻を合本のかたちで!

『翔ぶが如く』(司馬遼太郎)

続けて司馬遼太郎です。日本の戦争やその歴史について考えるということで紹介する最初の5冊に入れる本を『坂の上の雲』にするか最後まで迷ったのですが、一冊目に紹介した『この国のかたち』からの関連ということで『翔ぶが如く』にしました。

司馬遼太郎の大作長編の中でも有名な作品の一つですが、扱っている時代は『竜馬がゆく』が幕末、『翔ぶが如く』が明治維新から西南戦争まで、『坂の上の雲』が明治初期からから日露戦争終結までと、この三作を読むと司馬遼太郎という人がどのように当時の日本や日本人を位置づけていたのかということが理解できるといえます。刊行順では『竜馬がゆく』『坂の上の雲』『翔ぶが如く』となっており『翔ぶが如く』はこれらの作品の中では一番最後に書かれた作品です。

日清戦争、日露戦争を描く『坂の上の雲』の時点で、軍部の体制やあるいは日本社会の精神性には後の太平洋戦争に続く兆候が描かれていると感じるのですが、「では何故そうした兆候が生まれることにつながったのか?」という司馬遼太郎の疑問が、明治維新期を掘り下げる『翔ぶが如く』の執筆に進んでいったのではないかと考えています。

評論風小説というか小説風評論というような独特な文体の司馬遼太郎ですが、『翔ぶが如く』は特にその要素が強くほぼ全編が司馬遼太郎の評論ベースで書かれていて、司馬遼太郎に慣れない方が単純な歴史小説というつもりで読み始めると戸惑うかもしれません。

明治初年から西南戦争が終わるまでの西郷隆盛やその周辺の諸人物たちの思想や言動、仕事やその目指すところが互いに混沌としながら入り混じっていく様子が司馬遼太郎の丁寧な解釈で描かれます。明治という混乱の中でどのように政府なのか、社会なのか、あるいは国なのかができあがっていく様子。

ただ、印象としては「できあがっていく」という感じではありませんでした。時が進む中で「現出してきた」という方が確かなようにも感じます。それでも、その中でも一貫した精神や文化のようなものはあるようにも一方では感じます。そこに面白さもあれば怖さもあります。特に陸軍の精神や人間関係などはその後の時代への徳に負の影響を意識しながら記述したのではないかと感じています。

西郷隆盛に厳しく書いている印象も受けるので西郷隆盛好きな人には印象が良くないかもしれませんが、それでも多くの人に読んでほしい作品です。

Amazonの商品紹介から引用します。

明治維新とともに出発した新しい政府は、内外に深刻な問題を抱え絶えず分裂の危機を孕んでいた。明治六年、長い間くすぶり続けていた不満が爆発した。西郷隆盛が主唱した「征韓論」は、国の存亡を賭けた抗争にまで沸騰してゆく。征韓論から、西南戦争の結末まで新生日本を根底からゆさぶった、激動の時代を描く長篇小説全十冊。

『失敗の本質』(戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎)

戦争論と言うよりは組織論であり日本論と感じる本ですが、太平洋戦争当時の日本と今の日本に残念な部分で多くの共通点を感じてしまう本です。

単なる歴史研究ではなく、組織論などの研究者がノモンハン・ミッドウェー・ガダルカナル・インパール・レイテ・沖縄の六つの軍事作戦を題材に、当時の日本軍の中で起こっていたことを明らかにしようとする本です。

書の中で語られる環境に適応しながら進化していく「自己革新組織」は最近では近年のテーマでは「学習する組織」に通じる部分も多いです。それでもやはりこれだけ丁寧に、明快に書かれると気持ちが良い。いや、書かれている内容自体はむしろ現在の多くの組織にも共通していることも多すぎて暗澹たる気持ちにもなるのですが。

外部環境が変化していく中で「自己革新」していくことが求められるが、日本軍は過去の成功を元にした特定環境への最適化が極端に進みすぎたために組織としての柔軟性を失ってしまったといいます。官僚型組織体制と集団主義が両面から良くない方向へ作用し続けたことが、あまりに多くの犠牲を生み出すことにつながりました。特にアメリカ軍との比較は組織としての良い点悪い点が非常に明瞭です。

環境が変化しているにも関わらず、それどころか正常な判断であれば損失が出続けることが明確になってもなお、盲目で思考停止した状態で進み続けてしまう、という姿勢は果たしてしっかりと精算されたのでしょうか。歴史ある大手企業やあるいは行政で多くの不祥事が発生している背景も概ね本書で指摘されていることのように感じてしまいます。残念ながら歴史は繰り返されているし、むしろ最近の状況を見ていると悪化しているようにすら感じてしまいます。

Amazonの商品紹介から引用します。

敗戦の原因は何か? 今次の日本軍の戦略、組織面の研究に新しい光を当て、日本の企業組織に貴重な示唆を与える書。ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ沖海戦、沖縄戦という大東亜戦争における6つの作戦の失敗の原因を掘り下げ、構造的問題と結びつけた日本の組織論の金字塔。

『凍りの掌 シベリア抑留記』(おざわ ゆき)

著者の父親の実体験をもとに描かれた漫画作品です。

私の祖父はシベリア抑留からの帰還者です。祖父は私が小学生のときに亡くなってしまったため、直接話しを聞く機会はありませんでしたし、母に話を聞いたところ、母や伯母、叔父など祖父の子どもたちも祖父から戦争やシベリアでの話を聞く機会はあまりなかったようです。

戦争の生き証人から直接お話をお聞きできる機会はどんどんと減っています。語り継がねばならない、ということは当然のこととして「話したくない、言葉にしたくない」「思い出したくない」という当事者たちの気持ちにも同時に想いを馳せたいと個人的には思います。

「話したくない、言葉にしたくない」ということの背景にある祖父自身の経験や気持ちは想像することもできないけれど、それでも少しでも何かを知りたいと思い手にした本です。

壮絶な体験を描かれていますが、それでも漫画という媒体で表現できるようソフトに描かれているのだろうと感じる本でした。中身については多くは触れませんが、ぜひ多くの人に知ってほしい歴史です。

Amazonの商品紹介から引用します。

小澤昌一は東洋大学予科生。東京・本郷の下宿先で銃後の暮らしの中にいた。戦況が悪化する昭和20年1月末、突然名古屋から父が上京し、直接手渡された臨時召集令状。
北満州へ送られた後、上官から停戦命令の通達、すなわち終戦を知らされる。実弾を撃つことなく終わった戦争だったが、その後ソ連領の大地を北に向かわされ、ついにシベリアの荒野へ。待っていたのは粗末な収容所と、地獄のような重労働だった。

シベリア抑留の極限状況を生き抜いた著者の父親の実体験をもとに描かれた衝撃作、待望の新装版!

『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ、 三浦 みどり)

五冊選ぼうとした中で、日本の本ばかりを読んでいるわけではないのですが、どうしても日本についての本が多くなってしまいました。一冊は日本自体のこととは離れて戦争について考える本を選びたいと考えて、色々と迷う中で選んだのがこの本です。

ノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの作品なので、読んだことがなくともタイトルぐらいはご存知の方が多いかもしれません。

旧ソ連軍女性たちの声を集めた作品です。ソ連では看護士などとしてだけでなく各種兵士としても多く参軍した女性たちがいました。彼女たちへのインタビューをまとめた作品です。『戦争は女の顔をしていない』というタイトルにも表れていますが、当時従軍した女性たちはそこで起こったことや感じたことを従軍した事実を含めて語ることすら許されていなかったといいます。従軍当時の、そして帰還してからの、正負ありとあらゆる感情、体験が生々しく詰まっています。著者は良くこれだけの聞き書きをしてくれたと感じるすごい作品です。

女性たちの語る内容自体からも非常に衝撃を受けますし、タイトルで著者が指摘する通り、戦争というものに関する言説が基本的に男性によるものであり、そうした言説によって当たり前に自分自身の中の戦争についての印象や考えも形作られていたんだなということに気付かされ、そのことにも大きな衝撃を受けました。

ちょうどこの記事を書く直前には電車の中で女性を対象とした傷害事件も発生しています。『戦争は女の顔をしていない』という本は女性差別問題そのものを扱っている訳ではありませんが、女性たちの視点や声が受け入れられてこなかった一つの事象として捉えることもできると思いますし、普段私たちが多く目にする「男たちの戦争」とはまた違った角度から戦争について考えることができる本です。

Amazonの商品紹介から引用します。

ソ連では第二次世界大戦で100万人をこえる女性が従軍し、看護婦や軍医としてのみならず兵士として武器を手にして戦った。しかし戦後は世間から白い目で見られ、みずからの戦争体験をひた隠しにしなければならなかった――。500人以上の従軍女性から聞き取りをおこない戦争の真実を明らかにした、ノーベル文学賞作家の主著。(解説=澤地久枝)

以上、まずは5冊をご紹介しました。

この先の一年もまた本を読み、考えて、追加の本をご紹介していきたいと思います。

 最後までお読みいただきありがとうございました。