
いろいろな本を読んで生きています。紙で読んだ本、電子書籍で読んだ本、オーディオブックで聞いた本と、あと買った本と。単に趣味の本もありますが、仕事に関係していたり考えたい問いがあって読む本もあるのでご紹介します。
読んだ本
紹介は読み終えた順です。
『遺伝子とは何か? 現代生命科学の新たな謎』(中屋敷均)
先月の『サピエンス前史』に続いてランニング・ウォーキング中にAudibleで聴いたBLUEBACKS。
遺伝の謎に向き合い続けてきた科学の歴史から、現在研究が進められている領域までが概説されているしっかりブルーバックスらしい書籍で楽しかったです。後半はまったくの専門外の自分には馴染みのない用語も多かったですがそれでも面白く読み進めることができました。メンデルの実験から、ワトソン、クリックの二重らせんモデルぐらいまではすでに他の書籍で読んで知っていることも多かったですが、そこから関心をもっていたエピジェネティクスなど最近の研究に至る経緯や背景などは知らないことが多く勉強になりました。今後の研究の発展も楽しみな分野ですね。
『孤独と居場所の社会学』(阿比留久美)
知人とやっている読書会で対象書籍として読んだ書籍。
そもそも居場所とは何か、なぜ求められるのか。若者の成長や教育、社会化の過程にまつわる問題、家族や女性など特定の社会的アイデンティティやテーマに関わる問題、そして「権利」や「自立」など居場所の必要性やあり方を考えるさまざまな角度からの話題提供など関連するテーマが幅広く論じられています。
特徴は何よりも読みやすいこと。研究や論に触れた流れで、著者の経験や思考からの違和感がさらっと触れられているので、人によって大きく受け取る箇所が異なるように思います(だからこそ対象本を設定するテーマ型読書会で扱うにはとても良かったです)。
それぞれのテーマに関わる書籍や研究なども参考文献やブックガイドで紹介されているので、孤独・孤立や居場所といったテーマに関心のある方の入門の一冊としても良いかと思います。
『エンダーのゲーム』(オースン・スコット・カード)(野口幸夫訳)
SNSかYouTubeか何かで推薦されてるコメントを見たのが印象に残っており古書店で見かけた際に購入していた作品。10年ほど前に映画化もしているようですが、原作は1985年出版でネビュラ賞とヒューゴー賞のダブルクラウンという往年の名作的作品ということで、物語的にも翻訳的にも相当に時代を感じながらの550ページ弱はなかなか時間がかかりましたが、登場人物の造形や描き方、話の展開があまり読んだことのない類の作品で楽しみました。
タイトルにも「ゲーム」というワードが含まれている通り、RPG的に少年が困難な課題をクリアしながら成長していくゲーム的な物語という側面が強く、そしてその肝心の「ゲーム的」戦闘描写もなかなか面白いです(この辺りは確かに映画映えしそうと感じました)。
一方で、大人たちのあまりにパターナリスティックな振る舞いであったり、戦争中にはほぼ触れられないバガー(敵勢力)側の事情や視点が、最終盤に勝者の体験を通してのみ語られ、しかもそのご都合主義的な受容、消費のされ方はいやいやいや、と呆れを通り越してもはやすごいと関心する部分も。映画はどこをどんな風に描いた作品なんだろうなぁ。あと、訳がかなり時代がかっていたので、新訳も気になるところです(上記のリンクは新訳版です)が、もう一度読む気力が湧くかどうか。いつか映画を観て楽しめたら考えようかしら。
『ほんとうの会議 ネガティブ・ケイパビリティ実践法』(帚木蓬生)
日本でネガティブ・ケイパビリティを広めた帚木蓬生さんによる新書。
依存症の当事者グループ(ギャンブラーズアノニマス)や、福祉現場におけるオープン・ダイアローグなどのありようにネガティブ・ケイパビリティの実践を読み取る、というのが中心的な視点です。
「答えは質問の不幸である」というネガティブ・ケイパビリティの態度(個人的にはケイパビリティというより視点や態度と認識しています)の重要性は強く共感するところです。そして紹介される現場におけるネガティブ・ケイパビリティ的な対話を「ほんとうの会議」と位置づけることも、企業等の多くの組織における会議がそれとは程遠いものであることもまったくその通りであると思います。ただ、(著者がつけたのではないと推測しますが)副題に「実践法」と付けてしまうと期待と内容のズレがどうしても出てしまう部分は気になりました。実践というからには、(本書内で紹介される)不祥事を起こした企業や旧日本軍での会議を推測でダメ出しするだけでなく、多くの読者が現在所属している組織における会議をどうすればいいのかなにかしらの「ポジティブ」なヒントを得たいという人も多いのではないでしょうか。この点では枝廣さんの本(『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』)の方が引き続きオススメできます。
また、著者の専門や関心から文学や芸術家たちのことに多くの紙幅が割かれるのは前作から引き続きで、個人的には関心があるので良いのですが、これも「実践法」というタイトルとのギャップを感じることにつながる要素でした。「ほんとうの」「実践法」と総じてタイトルが別のものであった方が素直に楽しめたかな、という印象でした。
ネガティブ・ケイパビリティに関連するオススメの書籍は帚木さんの前作も含めて以下の記事でご紹介していますので良ければお読みください。
『ダーウィンの呪い』(千葉聡)
ダーウィンが示したことと社会に流布している進化論的イメージや社会進化論など進化論の他分野への拡大解釈や進化論的比喩との差が大きいかということは吉川浩満『理不尽な進化』でも読んでいましたが、この点をより深く掘り下げた力の入った新書でした。
ダーウィンの進化論の名の下に「ダーウィンが言っていた」という呪いの言葉でいかに誤った認識が広まり、社会に代償さまざまな悲劇が起こってきたか。その歴史や経緯緻密に構成した内容で良かったです。特に後半の優生学については知らなかったことも多かったので読んで本当に良かったと感じました。
昨今の選挙でも注目のテーマとなりましたが排外主義が拡大したり、生物学遺伝学その他の学問的技術的発展、AIを始めとした他分野の発展など様々な文脈からいつでも優生学的な論理や帰結に戻ってしまう危険性がとても大きいことがよくわかります。終盤の「事実から規範への飛躍(「である」から「べき」への飛躍)があってはならない(例えば「人間は歴史的に常に競争してきた」という事実があったからといって競争すべきと結論付けてはいけないし、「人間は協力行動や利他志向を持っている」が事実だとしてもそこから一足飛びにそうあるべきという規範を導いてはいけない))」は進化学や遺伝学分野のみならず社会のいろいろな場面で注意しなければならないシンプルだけど重要な指摘だと感じました。
『非営利組織の成果重視マネジメント NPO・行政・公益法人のための「自己評価手法」』 (P・F. ドラッカー、G.J. スターン著)(田中弥生訳)
先月岩波新書の『ピーター・ドラッカー』を読んだことと、ちょうど「組織診断」に関する研修を設計しているところだったのでドラッカーの非営利組織に関する書籍のうち未読だったこちらを手に取りました。
ドラッカーの考える非営利組織への問いから作られた15のワークシートの解説と、それらのワークシートを活用して自組織の評価(経営戦略の見直し)をどのように進めていくべきかを大きく3ステップに分けて解説する、という非常に実践的な書籍です。端的な感想としてはもっと早く読んでおけば良かったという内容でしたが、曲がりなりにも組織評価や経営戦略策定への伴走についての自分なりの視点や考えを作ってきた今のタイミングだからこそ、ドラッカーと自分の共通していた視点やドラッカーならではの視点を理解しやすかったし、実践のプロセスのパートについてもそのままでは現場には適用しにくいだろうなという観点を考えながら読むことができたという意味ではこのタイミングで読んで良かったかなと思います。
先に読んできた類書の中にもあぁこの視点はドラッカーから引き継がれてきたものだったんだな、と理解のし直しにつながるものも多かったのも収穫でした。NPO等への伴走支援・コンサルティングに関わる方にはぜひご一読をオススメします。
『荒野に果実が実るまで 新卒23歳 アフリカ駐在員の奮闘記』(田畑勇樹)
先月友人から誕生日プレゼントに、と贈っていただいた書籍です。
学生の頃から社会起業家やNPO/NGOスタッフの本はたくさん読んできましたが、ひさしぶりにアツい感覚を思い出す初期衝動に溢れた本でした。
アフリカの開発支援のNGO(認定NPO法人テラ・ルネッサンス)に新卒就職した若者が、現地で農業指導のプロジェクトを立ち上げる一年の奮闘記。SNSやネットニュースのコメントなど、NGOや寄付に対しては酷い不信感と蔑みの論調も目立ちます。その手のコメントをする人本人に読んでもらうのはなかなか難しいにしても、そういうコメントを読んでNGOや寄付に疑問や不安を感じて迷ってしまう人にはぜひ本書を手に取って、読んで、考えてみてほしいです。
現場の複雑さや不条理と向き合いながらそれでも人や地域のために仕事をするとはどういうことなのか。簡単できれいな答えがあるわけではなく、もがきあがきながら進んでいく若者の姿に励まされました。
それにしてもなかなか読ませる文章です。開高健ノンフィクション賞最終候補も頷けます。
『妊娠カレンダー』(小川洋子)
小川洋子さんの作品は何冊も読んできましたが、そういえば芥川賞受賞作は読んでいなかったなと思い手に取った作品。表題作を含む3編が収録されています。
小川さんはいろいろな形で身体的な「何か」とそこにまつわる不思議な感覚を描く(あるいは特定の歪さをもった身体を描くことで、わたしたちの当たり前の身体感覚への揺さぶりを仕掛ける)作家さんだなと思っていまして、両手のない「先生」の生活やその先生から語られる身体への眼差しに触れられる「ドミトリイ」は特にその後の小川作品につながる片鱗の見える初期作品という感じで良かったですし、表題作で扱われる「妊娠」もまさに身体の変性にまつわる不思議で不気味な体験そのものという感じなので、なるほどこれが小川洋子の芥川賞受賞作か、と納得の作品でした。
『ケアと編集』(白石正明)
「ケアをひらく」シリーズ編集者白石正明さんによる新書。
「ケアをひらく」はそこまで多く読んでいる訳ではないが大好きなシリーズです。語りたくなったり、人がどう語るのかを知りたくなる書籍も多いので他の方の書評やレビューなどを読むのはこれまでも楽しんでいましたが、著者ではなく、そして読者でもない、編集者というある意味特殊な立場から語られる「ケアをひらく」はまた新鮮で面白かったです。「ケアをひらく」で未読だったものも、シリーズ以外の作品も、紹介される本がどんどん読みたくなる読書で、なんなら「ケアと編集」という本書自体のテーマよりも紹介される書籍への興味の方が強くなってしまうぐらいでした。特に前々から気になっていた『弱いロボット』の読みたさがググっと増して楽しみになりました。
買った本・もらった本
少し積読を減らそうと買い控えていたのですが、夏の文庫フェアが始まってしまってつい財布の紐が緩みました。
『思考をあらわす「基礎日本語辞典」』(森田良行)
昨年の『2024年読んで面白かった本15冊』というベスト本記事で紹介した『気持ちをあらわす「基礎日本語辞典」』と同じシリーズ。楽しみ。
『野生のうたが聞こえる』(アレド・レオポルド)(新島義昭訳)
仕事柄さまざまな社会課題に触れますが、その特性上私自身も当事者に含まれることが多いにも関わらず自分なりの課題意識や視点をなかなか持ちにくいと感じることの多いのが自然・環境分野。社会課題そのものについて書かれた本ではなくもう少し広い文脈から自分なりに考えてみたいとたまに本を選ぶのですが、今回選んだのがこちらです。
『地球星人』(村田沙耶香)
村田沙耶香さんは読破したいと考えている作家の一人なのですが、まだまだ未読作品ばかりです。今年の新潮文庫の100冊(夏の文庫本フェア)に入っていたので良いタイミングだなと思い購入。
『地図と拳(上・下)』(小川哲)
小川哲さんは前々から気になっていたのですが、まだ作品を読んだことのない作家さんです。今回直木賞受賞作であるこちらの作品が集英社の夏の文庫フェア(ナツイチ)に含まれていたので購入してみました。
ちなみに、今年のナツイチの特典はネコのイラストの大きめサイズの栞(よまにゃ クリアしおり)なのですが、かわいくて良いです。
『ハイファに戻って/太陽の男たち』(ガッサーン・カナファーニー)(奴田原睦明、黒田寿郎訳)
パレスチナ解放運動で重要な役割を果たすかたわら、小説、戯曲を執筆していたガッサーン・カナファーニーの作品集。
『自由思考』(中村文則)
村田沙耶香さんと同じく読破したい作家の一人中村文則。こちらもまだまだ未読作が多いのですが、とりあえずエッセイを読んで読みたさを加速させたいと思います。
『卍(まんじ)』『細雪(上・中・下)』(谷崎潤一郎)
先日伯母の家へ遊びに行っていたのですが、その際に伯母の本棚からいただいてきたもの。行く度に何冊かずつもらってきていたので、我が家にある谷崎の本はだいたい伯母からのいただきものです。
今月のカフェ活
3年前に引っ越してくるまであまり知らなかったのですが札幌は良いカフェがとても多いです。最近は仕事が忙しくなかなかカフェでゆっくり読書する時間も取れないのですが、私読書好きでありカフェ好きでもありますので、読書に良いカフェをご紹介できればと思います。「読書 カフェ」などで検索しても、本がインテリアとしておしゃれに並べてあるカフェなどがでてきてしまい、それはそれで良いのですが、ゆっくり静かに読書したい時にいきたいお店とは違っていたりしますからね。落ち着いたら読書に良いカフェだけをまとめて紹介する記事なども書きたいところです。
枯淡珈琲

西11丁目駅から歩いて数分、市電通り沿いのビル1階に入っているお店。ビルは大正時代の建設ということで現状札幌市内の最古のビルとのことですが、お店は2024年4月に開店した比較的新しいお店です。(枯淡珈琲の前にも別の喫茶店が入っていましたが、その閉店後に開店したのがこちらのお店)10席ほどの小さなお店で、珈琲と珈琲にあう甘味がいただけます。本を読むには落ち着く空間です。
喫茶ちゃっかる

西18丁目駅3番出口眼の前にある純喫茶。札幌には何十年もやっているレトロな純喫茶がいくつもあり、こちらもなかなかレトロな雰囲気ですが、実は開店は2016年と比較的新しめ。レトロな純喫茶をつくる、という強い意気込みで作られたお店らしく、店内の雰囲気もメニューもばっちり純喫茶です。昭和レトロな雰囲気に浸って楽しみたい方には良い空間ですが、純喫茶リスペクトで喫煙OKなので、タバコが苦手な方が長時間滞在するのは厳しいかも。
以上です。
「私もこの本読んだ!」というものがあれば感想を聞かせていただけると嬉しいですしオススメの本などもありましたらぜひぜひ教えて下さい。
最後までお読みいただきありがとうございました。