本から本へつながる書評ブログ『淡青色のゴールド』

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ネガティブ・ケイパビリティを学ぶためのオススメ本3冊

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ネガティブ・ケイパビリティを学ぶためのオススメ本3冊

こんにちは。書評ブログ「淡青色のゴールド」へようこそ。本記事では「ネガティブ・ケイパビリティを学ぶためのオススメ本3冊」と題し、これからネガティブ・ケイパビリティについて学びたい人にオススメの本をご紹介します。

 

ネガティブ・ケイパビリティとは

ネガティブ・ケイパビリティとは、「どうにも答えの出ない問題、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」を意味しています。一般的にケイパビリティとは何かを「することができる」能力という意味合いですので、一見すると矛盾するようなことを指している印象もあるかもしれません。ネガティブ・ケイパビリティと対になっている言葉がポジティブ・ケイパビリティであり、「なるべく早く答えを出そうとする、あるいは出すことのできる能力」のことです。ケイパビリティ・能力のイメージは基本的にはこのポジティブ・ケイパビリティのことを指しているでしょう。

もちろんポジティブ・ケイパビリティが重要であることは確かですが、それだけでは解決したり対処することのできない状況や場面が増えているのが現代社会、あるいはこれからの社会なのではないかということで近年注目を集めているのがネガティブ・ケイパビリティです。

背景①VUCAな時代

近年の社会の特徴を表すキーワードとしてVUCAというものがあります。VUCAとは現代の社会状況を表す4つのキーワード、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、つまり現代社会は先行きの見通しを立てることが難しく、明確な未来予測や分析に基づく計画に従って物事を正しく進めていく、という従来のやり方が通用しにくい時代だということができます。

例えばコロナ禍などは近年の非常にわかりやすい例でしたが、計画を立てていた時点ではまったく想定していなかった事態が発生した際に、その状況の変化に向き合い、対処していくという態度・能力はまさにネガティブ・ケイパビリティのことを指しているといえます。

背景②仕事やキャリア、業務においても答えのない問題へ対処する能力が求められる時代

また、ネガティブ・ケイパビリティが求められているのは何もコロナ禍や自然災害などの社会的に大きな事象についてだけではありません。日常的な業務や、私たちの仕事・キャリアにも関わってきます。職業に関連するトピックとして近年特に注目を集めているものとして「AI(人工知能)」がありますが、AIやコンピュータによる計算、ロボットによる自動化などは、素早く正確な答えを出すポジティブ・ケイパビリティが求められるような分野から人間による作業からの置き換えを引き起こしていきやすいものです。個人的には「AIの導入によって仕事が奪われる」という論調を過度に強調することは好みませんが、元々現代社会に生きる私たちの多くは、(特に日本においては)そもそも教育の過程でも予め決まっている答えをなるべく早く正確にインプット、アウトプットするというポジティブ・ケイパビリティを伸ばすことに主眼を置いた教育を受けてきていますので、相当に意識してていかないとネガティブ・ケイパビリティを鍛えることは難しいでしょう。

ネガティブ・ケイパビリティを学ぶためのオススメ本3冊

ここまで、ネガティブ・ケイパビリティの概要と、それが求められるようになってきている背景について解説しました。ここからはネガティブ・ケイパビリティについて学ぶことのできる本をご紹介します。3冊の本それぞれ特徴がありますので、ご自身の関心に合わせて選んでいただければ幸いです。

『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(帚木蓬生)

まず一冊目は精神科医で作家の帚木蓬生さんの著書『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』です。ネガティブ・ケイパビリティ関連の本ではおそらく最も売れている本だと思います。

帚木さんは、一般的にポジティブ・ケイパビリティがもてはやされており、それができないことは否定的に捉えられることが多いですが、人が生きていく上ではどうにも答え出しようのない問題にもしばしば直面しますし、今後の社会はどんどんと見通しの立ちにくいものになっていくと言われる中で、急いで答えを出さずに状況に耐えながら過ごしていく態度を取れる方がむしろ人生に希望を持っていくことができるといいます。

本書の特徴は、ネガティブ・ケイパビリティという概念がどのように生み出され、そして注目されるようになってきたのか、という経緯について非常に丁寧に解説されているということです。元々の概念の提唱者である詩人のキーツや、キーツが発見した概念の有用性に注目した精神科医ビオンのそれぞれの人生やネガティブ・ケイパビリティ概念との出会いなどが丁寧に紹介し、その上でそうした概念の来歴を踏まえて、医療や教育、そして芸術などさまざまな分野でどのようにネガティブ・ケイパビリティが活かされるのかを解説してくれます。

Amazonの内容紹介から引用します。

「負の力」が身につけば、人生は生きやすくなる。セラピー犬の「心くん」の分かる仕組みからマニュアルに慣れた脳の限界、現代教育で重視されるポジティブ・ケイパビリティの偏り、希望する脳とプラセボ効果との関係…教育・医療・介護の現場でも注目され、臨床40年の精神科医である著者自身も救われている「負の力」を多角的に分析した、心揺さぶられる地平。

別途書評も書いておりますので、良ければお読みください。

 

daisuket-book.hatenablog.com

 

『ほんとうの会議 ネガティブ・ケイパビリティ実践法』(帚木蓬生)(2025/10/13追記)

20205年3月に帚木さんがネガティブ・ケイパビリティに関する新書を出版されました。副題にある通り「実践」がテーマになっており、具体的には依存症の当事者グループ(ギャンブラーズアノニマス)や、福祉現場におけるオープン・ダイアローグなどのありようにネガティブ・ケイパビリティの実践を読み取ることが主な内容です。そしてこれらのネガティブ・ケイパビリティが実践されている現場と対比する形で、不祥事を起こした企業や旧日本軍での会議がいかに機能不全のものだったのかということが指摘されます。オープン・ダイアローグなどに関心のある方には非常にオススメです。

一方で、一般の企業や営利組織にお勤めの方が自組織においてすぐ適用できる実践を探して本書を読むとややハードルの高さを感じるかもしれません。自らの所属する組織における実践について考えたいという方は次にご紹介している枝廣さんの著作が引き続きオススメです。

Amazonの内容紹介から引用します。

討論なし。
批判なし。
結論なし。
「言いっ放し、聞きっ放し」の会議が、
なぜこれほど人生を豊かにするのか?

私たちが囚われている
「不毛な会議」観を
根底からひっくり返す!

人生を変える、新しい形のミーティング

本書の内容
●「ネガティブ・ケイパビリティ」と「オープン・ダイアローグ」が、新しいミーティングの二大要素。
●ネガティブ・ケイパビリティとは、「不確実さや神秘さ、疑いの中に、事実や理を早急に頼ることなく、居続けられる能力」。
●オープン・ダイアローグの核心は、ポリフォニー(多声性)。
●答えのない世界に身を置いて、対話し続けるうちに、思いもかけない世界が見えてくる。
●評価を放棄することで、自由で自然な対話が生まれる。
●ミーティングは、雑多な意見が披露され、種々の声が行き交うカーニバルのようであるべき。
●「答えは質問の不幸である」。すぐに答えを求めることは可能性を閉ざす。
●薬もカウンセリングも効果がなかったギャンブル症者が、自助グループのミーティングで回復。
●ラカン、メルロ=ポンティ、カミュ、バタイユ、ミッテランらフランスの知性を輩出したパリのアパルトマンで、日夜繰り広げられた「終わりなき対話」。

 

 

『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』(枝廣淳子)

二冊目は環境ジャーナリスト、翻訳家などさまざまな肩書、職業で活躍する枝廣淳子さんの『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』です。

箒木さんの本がネガティブ・ケイパビリティという概念自体の解説や歴史的な経緯などを丁寧に行う本だとすると、枝廣さんの本は実践編という印象の本です。個人としてネガティブ・ケイパビリティを高めていくためにどのようなことが必要なのかだったり、マネジメント視点でネガティブ・ケイパビリティを発揮しながらチームメンバーに向き合っていく姿勢、あるいは地域などのコミュニティにおいてネガティブ・ケイパビリティがいかに重要で、どのように発揮されうるのかといったことが具体的な事例も織り交ぜながら解説されています。

枝廣さんご自身が、全国各地の自治体のまちづくり等に多く関わってきており、地域のさまざまなステークホルダーが集まった場づくりや、そうした場における合意形成に向けたファシリテーションなどを経験してきていることからご自身の経験も踏まえた解説は非常にわかりやすく、個人あるいは組織・コミュニティとしての取り組みやすさがあります。

Amazonの商品紹介から引用します。

判断を迫られる数々の場面
会社・学校・家庭・地域社会...
早さ・効率だけでは解決しない!
「わからない」不安を受け容れ、正解がない問題に向き合うための処方箋

VUCAの時代にあって、より質の高い解決策を見出すために、あえていったん立ち止まり、物事の本質を見極めることの大切さ。ネガティブ・ケイパビリティの基本的なエッセンスの解説から、その高め方、具体的事例までをトータルでお話しします。

 

『ネガティヴ・ケイパビリティで生きる ―答えを急がず立ち止まる力』(谷川嘉浩、朱喜哲、杉谷和哉)

三冊目は谷川嘉浩さん、朱喜哲さん、杉谷和哉さんという哲学や公共政策等を専門にする若手研究者3人がネガティブ・ケイパビリティをテーマに語る対談本『ネガティヴ・ケイパビリティで生きる ―答えを急がず立ち止まる力』です。

ネガティブ・ケイパビリティという概念自体についての解説はそれほど丁寧に行われてはいないので、ネガティブ・ケイパビリティ自体についてまずは知りたいという方は箒木さんか枝廣さんの本を先に読むことをオススメします。

本書の特徴は、ネガティブ・ケイパビリティ概念の自体の解説や深掘りよりも、この「答えの出ない事態に耐える能力」が必要とされる現代社会の課題や背景について様々なトピックを取り上げながら対話がなされていくということにあります。例えば陰謀論に影響される人が増えている背景として、不安定で複雑で見通しの立てにくい時代状況の中で「わかりやすい答え」に飛びついてしまいたくなるという心理や態度があり、それを超えるためにネガティブ・ケイパビリティが求められている、といったような話が、現代社会のマーケティングや消費、SNS、プライバシー、倫理など対談本ならではの話題の広がりで展開されていきます。非常に幅広いテーマが登場しますので、ネガティブ・ケイパビリティについて考えると同時に、合わせて考えていきたいトピックやキーワード、書籍なども見つけることができるかと思います。

Amazonの商品紹介から引用します。

情報や刺激の濁流にさらされる加速社会は、即断即決をよしとする世界だ。私たちは物事を性急に理解し、早々に結論を出し、何でも迅速に解決しようとする。しかし、それでいいのだろうか。「ネガティヴ・ケイパビリティ」とは不可解な物事、問題に直面したとき、簡単に解決したり安易に納得したりしない能力のこと。わからなさを受け入れ、揺れながら考え続ける力だ。注目の若手論客3人が対話でネガティヴ・ケイパビリティの魅力と実践可能性に迫る知の饗宴!

追加:『対人支援に活かす ネガティブ・ケイパビリティ』(田中稔哉)(2025/10/13追記)

ネガティブ・ケイパビリティをテーマにした良書をあらたに追加します。特に書名にも含まれている通り対人支援に関わっていらっしゃる方には強くオススメします。教育や看護・医療、福祉など特定の職種や業界、テーマに関心のある方にという限定がついてしまうため「オススメ本3冊」という本記事のタイトル自体は変えずにおまけのご紹介という位置づけで追加いたします。

本書ではネガティブ・ケイパビリティを「あえて答えを出さず、そこに踏みとどまる力 — 保留状態維持力」と定義しています。保留状態維持力、非常にわかりやすいですね。このように定義した上で、対人支援の一連のプロセスの中にどのようにネガティブ・ケイパビリティが活かされうるのかを構造化して解説する前半と、様々な対人支援の現場を経験するプロフェッショナルへのインタビューからネガティブ・ケイパビリティの発揮を読み取る後半という構成となっています。特にインタビューの中で、クライアント(相談者や患者など)との関係構築や支援の中で判断を保留しながら関わっていくことがいかに重要であるかという点は対人支援に関わる方であれば直感的に理解しやすいかと思いますが、加えて多くのプロフェッショナルが、現場での経験を抽象化し、学びを得て成長していくという過程においてネガティブ・ケイパビリティの発揮が重要であったと捉えている点は非常に興味深いです。

Amazonの内容紹介から引用します。

ネガティブ・ケイパビリティは、人間の能力や創造性の一環として、未知の状況や矛盾した感情、曖昧さ、不確実性に直面し、それらを受け入れる能力を指す。これは、固定された思考パターンや既存の概念やルールにとらわれることなく、新たなアイデアや洞察を生み出すために必要な能力である。
ネガティブ・ケイパビリティを持つ人は、矛盾や不確実性に対して耐えることができ、それを創造的な可能性として捉えることができる。彼らは自分の意識を開放し、複数の視点や相反する考えを同時に受け入れることができるため、より深い洞察や理解に至ることができる。
対人支援の現場にはいくつもの曖昧さや葛藤がある。代表的なものをあげると、
・相談者、クライエント、患者など支援を受ける側の人(以下、相談者)を取り巻く、時に相談者と利益相反する関係者の存在
・相談者(の可能性)に対する信頼と懐疑
・相談者の固有性と類型化による見(診)立て
そして、もっとも悩ましいのが、支援者の万能感(いつでも相談者の役に立てる存在でありたい)の保持と、無力感(役に立てないことがある自分)の受容である。言うまでもなく、1人の相談者であっても、すべての側面で長期にわたり(極端に言えば亡くなるまで)支援することはムリである。対人支援には物理的な限定性があるし、1人ですべてを担うのは難しい。にもかかわらず、それをしようとするのは、相談者に対して不誠実である。支援者は自分の支援の限界を受け入れながらも、できるだけ役に立とうと努力し続けるのである。
しかし、そもそも人はすぐに感じていること、考えていることをありのままに表現することは少ない。見方には、いくつものバイアスがかかっている。鵜呑みにすることは、漏れなく何らかの色のついたメガネをかけているのである。
ネガティブ・ケイパビリティとは、「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」「性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中に留まり続けることができる能力」である。

別途、書評記事も書いておりますので良ければお読みください。

 

daisuket-book.hatenablog.com

 

 

以上、本記事ではネガティブ・ケイパビリティに関心を持った方にオススメの本を3冊ご紹介しました。今後ますますその重要性が高まっていく概念だと思いますので、本記事をきっかけにどれか一冊でも手にしていただけたら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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