本から本へつながる書評ブログ『淡青色のゴールド』

読書家の経営コンサルタントのdaisuketによるブログです。一冊ずつ丁寧に書評しながら、合わせて読むと面白い本をご紹介します。

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NPO支援の仕事をする日々の中で手に取った本たち(2026年6月)

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NPO支援の仕事をする日々の中で手に取った本たち(2026年6月)

いろいろな本を読んで生きています。

紙の本、電子書籍、オーディオブック、そして買ったままの本も含めて。趣味で読む本もあれば、仕事に関係するもの、考えたい問いから手に取る本もあります。そんな最近の読書の記録です。

NPOに関わる方や、社会のことを考える中で本を読む方にとって、関心が重なるところがあれば嬉しいです。

 

読んだ本

紹介は読んだ順です。

『進化を続ける小規模多機能自治~『小家族化』が進む地域の持続可能性を高め続けるために、地域・行政・議会・専門家に求められる81のアクション~」(ソシオ・マネジメント第3号&第6号 統合改訂版』(川北 秀人 IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表者)

officeiihoe.stores.jp

特集タイトルの通り「小規模多機能自治」がテーマです。小規模多機能自治に何らかの形で関わる方、地域自治・地域づくりなどに関わっておられる方は必読の書籍の最新版です。ソシオ・マネジメントでは小規模多機能自治に関わるものがこれまでに第3号、第6号と2冊出ています。第3号が小規模多機能自治自体の解説や背景なども含めて地域運営組織や町会等など担い手側向けとして主に書かれたもの、第6号は自治体職員やその他地域の担い手を支える形で関わるという視点で主に書かれたものでしたが、それぞれアップデートが入った最新統合版という位置づけです。

3号も6号も持ってますが最新情報や知見に触れておくために即購入しました。これまで私は小規模多機能自治の最前線の現場に直接関わる機会はあまりなかったのですが、北海道で少しずつお仕事として関わらせていただく機会も出てきそうなので、実践にも触れながら考えを深めていきたいです。

 

『ミス・サンシャイン』(吉田修一)

往年の大女優と大学院生の青年の交流を描いた作品。

出演した作品や演技とその時々の生活や背景などを描きながら、現代の時間や交流とオーバーラップしつつ進んでいく展開は吉田修一のお得意のところという感じです。舞台芸術的な世界や作品を丁寧に描くという意味では『国宝』とも通じるのですが、『国宝』は地の文の独特さもあり(発明的とも言えるあの文体が良いのですが)、どちらがより吉田修一らしいかと言われればこちらでしょう。結びの描き方も落ち着いていて大変良かったです。人生で歩んできた時間や人とのつながりを大切にしたくなる温かい作品です。

 

『新約聖書を知っていますか』(阿刀田高)

『旧約聖書を知っていますか』に続けて読了。

両方読んでみて感じたのは自分が今まで聖書の物語やエピソードとして知っていたものは多くが『旧約』だったのだなということ。『旧約』はイスラエルの民や王国の歴史物語的な側面も強いので、わかりやすく面白いエピソードが多い。一方の『新約』はあくまで『旧約』をベースにしつつ新たな契約であり教えでありという位置付けや役割の違いもあるのだろうけど、エピソード的な面白みは比較的少ないように感じました。

イエスの歩み自体はそれなりには知っていたけど、イエスに関わる人物については使徒たちも含めてあまり知らなかったので人となりや関係性などが知れたこと、福音書や黙示録などなんとなく言葉としては聞いたことあったけどよくわかっていなかった新約聖書の構成など大まかなところを掴めたのが良かったです。阿刀田さんに感謝。

 

『人類にとって「推し」とはいったい何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(横川良明)

先月までに『考察する若者たち』『イン・ザ・メガチャーチ』と読んできたのでもう少し「推し」について考えてみるかということで読んでみたのがこちら。

精力的に推し活をするオタクと自認するライターの方の著作ということでなるほどわかりやすい。特に前半は「推し」とか「推し活」とかがいまいちよくわからないなという方向けに、推し活とは何なのか、どういう思考や感情で何をやっているのかを解説する感じでわかりやすかったです。ただ、中盤以降は自身同様に推し活をする人に対する警鐘だったり、自分自身の生態の解説だったりと、視点や狙いがごちゃごちゃしてきて、ちょっと読みにくい部分もあったかなという印象もありました。

推し活やオタクといってもその対象も振る舞いも幅広くて、本書で書かれているのは相当に濃い一部の人たちの話だと思います。現代社会的な考える点があるとすれば、その濃さはあくまで程度の問題であって明確な境界があるわけではなく、推し活的な感覚や願望を持つ人はとても広いということと、本書で描かれる濃い行動や感情との関係をどう捉えていくかというところかなと思いました。私も多分にオタク気質は持っているけれど、それこそ著者とは界隈も振る舞いも感覚も異なっていて、それが「濃さ」の一言で片付けられるものなのかどうか。また、オタク的な気質やふるまいと、「推し」的感覚やふるまいには重複する部分も大いにあるけれど、でもやっぱり異なるものなので、他のトピックと絡めて論じるようなとき(例えば「ファンドレイジング×推し活」など)にはその辺りを雑にしないようにしたいですね。本書でもどちらのキーワードにも触れられているけれど、この辺りは論じられてはいませんでしたので、自分なりに考えていきたい部分です。

 

『ならずものがやってくる』(ジェニファー・イーガン著)(谷崎由依訳)

ピュリッツァー賞、全米批評家協会賞受賞作。

盗癖を抱える女性と、その元上司で音楽プロデューサーの男性を軸に、二人の周囲の人物との関係が描かれます。章ごとに誰の視点なのかと、物語の時系列が入れ替わりながら進んでいく大胆な構成です。誰の過去もしくは未来に、誰と誰がどのように関わっているのか、入り組んだ構成になっているので読むのになかなか苦労する人も少なくないでしょう。それは構成が入り組んだものになっていながらも、各章は基本的にそれぞれ単独で完結している連作短編集的にもなっているし、全体を通すと複雑な人間関係や時間を描いた群像劇にもなっているという二重性を受け取るのがなかなか難しいから。しかも各章で視点の中心として描かれる各人物はそれぞれの性質・性格や、人間関係、境遇などにさまざまな問題を抱えていて、単純にそれぞれの章を読み進める中ではそれらの問題自体が主題なように読めてしまうからなおさら読み方が複層的になる。

解説で「CDのアルバム」的と評されていたのはなるほどと思いました。同じアーティストにより全体としてのコンセプトやテーマはありつつも、収録されている一曲一曲はまったく異なる印象を持つさまざまな曲で構成されている。一枚を通して聴くと、素晴らしい余韻を味わえますし、印象的な曲(章)をもうリピートしたくなります。

映像化してビジュアルや音楽の補足情報があれば構成の複雑さは理解しやすくなるだろうけど、この複雑さというか「あれ、この人はどの人で未来ではどんな人に囲まれて何してるんだっけ?」という健全な忘却感による戸惑いに向き合いながら読み進んでいくのが本作品の味わい方の魅力の一つなんだろうと思うので、その点では文学ならではの作品だと感じます。

たまたま古書店で見かけてなんとなく気になり購入した本でした。よくわからないままに読み進めたのですが、読んだことない類の作品で大いに楽しませてもらいました。

 

『これからはじめるAIO AI最適化の教科書』(瀧内賢)

タイトルの通りAIO(Artificial Intelligence Optimization)の解説書。

AI×SEO的なキーワードがたくさんあっていまいち違いがよくわかっていなかったところから、SEOとの関係性も含めてかなり整理して理解することができました。

Web等にあまり詳しくない方にも伝わるかなという形でいうと、数ヶ月前に読んださとなおさんの『AIに選ばれ、ファンに愛される。』の「AIに選ばれ」の部分を実装するためにどのような考え方があるのか、具体的な実装方法や運用方法などが詳しく解説されている書籍という位置付けといえるかと思います。

まずSEOについては不要になる訳でもまったく異なることが必要になる訳でもなく、AIOにとってもSEOやその前提となる構造化されたHTMLは当たり前に重要であるし、むしろその重要性が増しているとすら言えるというのが基本として大切な部分。本書で解説される3層の考え方はそれぞれ以下のようなもの。

AEO(Answer Engine Optimization)
→理解・解答最適化(回答エンジン最適化):主に、AIによる理解を重要視し、直接的な回答として利用されることを目指す

GEO(Generative Engine Optimization)
→引用・生成最適化(生成エンジン最適化):主に、権威性・信頼性を重要視し、情報源として引用・統合されることを目指す

LLMO(Large Language Model Optimization)
→学習対象化最適化(大規模言語モデル最適化):主に、テキスト品質と情報価値を重要視し、将来のモデル学習データとして採用されることを目指す

AI側のアルゴリズムや主に利用されるAIエンジンも今後どんどん変わっていくと思いますが、まずは基本としてどのような考え方があるのか体系的に理解できたのは良かったです。

 

『進化という迷宮 隠れた「調律者」を追え』(千葉聡)

千葉聡さんの著作は『進化のからくり』『ダーウィンの呪い』に続いて3冊目。

前に読んだ2冊が非常に面白かったので期待していて、実際面白かったのだけど、過去に読んだものに比べると記述内容や難易度の幅というかバランスがあまり良くないように感じてしまいました。

内容の大枠としては小進化(同一の種の中で起こる小規模な遺伝子や形質の変化)と大進化(新しい種の誕生や恐竜から鳥類、魚類から両生類のような属・科の出現に関わる大規模なもの)との間にあるギャップはどのように説明されうるのか、そこに進化学研究者はどのように挑み、考え、論を戦わせてきたのか、というのが基本ラインです。その基本ラインに対して、著者自身の研究テーマとの出会いや具体的な研究生活のエピソード、著者周辺の研究者の具体的な研究エピソードなど具体的な話が書かれる部分と、もう少し大きな視点での進化学自体の派閥の違いや論争についてグールドの理論やその変遷に触れながら述べる部分が絡み合って記述されていくのですが、グールドの理論の詳細の方はかなり専門的で派閥対立や理論の変遷を理解しながら追っていくのはかなり難しかったです。

この辺りは進化学自体にある程度触れてきている人でないと厳しいように思いますが、進化学やその隣接テーマあたりでの研究者志望の学生であればモチベーションが上がったり、興味が湧いたりする話が多いのかなとも思いました。門外漢の進化学ファンとしても今後も各種議論や書籍を追っていきたいので本作の難易度にめげずに読み進めていきたいです。

 

『まちをつなぐABCD』(コーマック・ラッセル、ジョン・マクナイト著)(似内遼一 監修)(中村雅子訳)

知人とやっている読書会の課題本として読んだもの。

まちづくりの手法、フレームワークの一つとして知られるAset Based Community Development(ABCD)について扱った書籍。とはいえ教科書的に理路整然と正しい手法を解説するような内容ではありません。また、本文中では多くの事例が紹介されていますが、事例集という訳でもありません。各地域の話は事例というより物語として紹介されていて、全体としてエッセイのような雰囲気があります。文章も敬体で訳されていますし。

ABCDの考え方の基本となるのは、地域を課題や弱みの視点から眺めるのではなく、地域にあるアセットに着目し直すところから始めよう、というもの。地域に住む人、組織や環境、歴史や文化などさまざまなアセットに気づく(発掘する)ことや、そうしたアセット同士を結ぶつなぎ手の存在が重要だといいます。つなぎ手の重要性は社会的処方などの文脈のリンクワーカーでも指摘されるところですが、リンクワーカーは医療や福祉に重点があるので、もう少しライトで幅広いものという感じでしょうか。

主に欧米の文化圏での事例が多いので、ワークショップや対話で使われている言葉遣いは少し修正する必要はありますが、基本的な考え方は日本の地域でも概ね取り入れやすいのではないかと感じます。

ガチガチのフレームワークでも硬い学術理論という訳でもないという意味では、リーダーシップ論におけるサーバント・リーダーシップが学術的な理論というよりはリーダーシップに関する哲学である、というようなものに近い感覚もありました。

本書の原題であるthe Connected Communityを監修の似内さんは無縁社会に対する言葉として創縁コミュニティと訳しました。各地、各分野で孤独・孤立について考え、さまざまな取り組みを進めていらっしゃるみなさんには色々なヒントが見つかる本になるでしょう。

 

買った本

『研修デザインハンドブック』(ボブ・ハイク著)(中村文子訳)

自分の講師業の見直しやアップデートにというのもありますが、NPO支援者の育成などを考えていく上でも研修というもののうまく使っていくことは重要だと考えているので改めて知識と思考を深めていくために購入したもの。関連する書籍を何冊か続けて読みたいのですが、どれも分厚いのよねぇ。

『永遠と横道世之介(上・下)』(吉田修一)

数ある吉田修一作品の中でもどれが好きかと言われたらやはり『横道世之介』だし、もっと言えば人生で読んだ小説の中で好きな小説を選ぶにしてもトップ10にずっと入っている作品のシリーズ完結編がついに文庫化。映画化プロジェクトも進んでいるということで今から楽しみ。

今月のカフェ読書

trio coffee club

札幌駅北口、ヨドバシカメラのの北側あたりに2025年9月に開店したお店。大通りのテレビ塔近くの古いビルに入っているミンガスコーヒーの系列で3号店だそう。建物の外に目立つ看板などは出しておらず隠れ家感があります。札駅近くなのに混んでおらず、店内に流れるジャズを聴きながら落ち着くことができます。

最後までお読みいただきありがとうございました。