本から本へつながる書評ブログ『淡青色のゴールド』

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レビュー『脳が冴える15の習慣』ライフハックの背景を理解する

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レビュー『脳が冴える15の習慣』ライフハックの背景を理解する

こんにちは。書評ブロガーのdaisuketです。本記事は築山節さんの『脳が冴える15の習慣』の書評記事です。「脳に良い習慣」について非常に端的にとまとまっている良書でした。本書を読むと、巷にあふれる「ライフハック的」なノウハウやTipsの背景に共通する(脳の)仕組みについて理解を深めることができます。

 

 

 

 

なぜ読んだのか?

先日書評を書いた池谷裕二先生の『脳には妙なクセがある』を読んだ後、欲しい物リストの中から思い出して読んだ本です。 


『脳には妙なクセがある』では終盤のまとめとして、「意思とは経験から生まれる反射のようなものであり、過去の経験に依存している。だから良い意思や思考を持って『よく生きる』ためには『よい経験をする』ことが大切。そうすることで『よい癖』を作ることができる」ということが述べられていました。

 

今回読んだこの『脳が冴える15の習慣』は、「脳」と「習慣(クセ)」ということで、まさにこの文脈にばっちりの本です。

 

15の習慣の前提となる基本原則

タイトルの通り脳に良いとされる15個の習慣が順に紹介されるという構成なのですが、まず示されるのは15個の習慣の前提となる基本原則。本書において習慣とは何を指しているかという定義です。著者の築山さんが紹介する「習慣」とは、

 

  • 時間的にも経済的にも負担にならない
  • 脳に良い影響を与えられるだけでなく、人生がより豊かになる

 

という2つの条件を満たすものです。

 

何事も何日も繰り返せば習慣になる、とか何とかライフハック系の記事ではよく見かけますね。しかし、続かないのです。全然習慣になりません。続かないし習慣にもなかなかならないからこそ、いつまで経っても私たちはライフハック的な記事を必要とし続けているともいえます。結局のところ無理は続かないのです。苦痛なく続けられるもの、続いていくものをこそ習慣というわけですね。

 

本書で紹介される15の習慣

本書で挙げられる15の習慣もご紹介します。習慣ごとに章のタイトルになっていますので、気になるところだけ読むのも良いです。

 

習慣1 生活の原点をつくる

脳を活性化させる朝の過ごし方。足・手・口をよく動かそう

 

習慣2 集中力を高める

生活のどこかに「試験を受けている状態」を持とう

 

習慣3 睡眠の意義

夜は情報を蓄える時間。睡眠中の「整理力」を利用しよう


ここまでの習慣1~3は脳の活動を安定させ、また、集中力や頭の回転の速さを高めたりするための習慣です。

 

習慣4 脳の持続力を高める

家事こそ「脳トレ」。雑用を積極的にこなそう

 

習慣5 問題解決能力を高める

自分を動かす「ルール」と「行動予定表」をつくろう

 

習慣6 思考の整理

忙しい時ほど「机の片付け」を優先させよう

 

習慣4〜6は思考系の中枢である前頭葉を鍛えたり、その力が発揮されやすい環境を整えたりするための習慣です。

 

習慣7 注意力を高める

意識して目をよく動かそう。耳から情報を取ろう

 

習慣8 記憶力を高める

「報告書」「まとめ」「ブログ」を積極的に書こう

 

習慣7、8は情報を脳に入力する力と記憶力を高めるための習慣です。

 

習慣9 話す力を高める

メモや写真などを手がかりにして、長い話を組み立てよう

 

習慣10 表現を豊かにする

「たとえ話」を混ぜながら、相手の身になって話そう

 

習慣9、10情報を出力する力、つまりコミュニケーション能力を高めるための習慣です。

 

習慣11 脳を健康に保つ食事

脳のためにも、適度な運動と「腹八分目」を心がけよう

 

習慣12 脳の健康診断

定期的に画像検査を受け、脳の状態をチェックしよう

 

習慣11、12は臓器としての脳を健康に保つための習慣です。

 

習慣13 脳の自己管理

「失敗ノート」を書こう。自分の批判者を大切にしよう

 

習慣14 想像力を高める

ひらめきは「余計なこと」の中にある。活動をマルチにしよう

 

習慣15 意欲を高める

人を好意的に評価しよう。時にはダメな自分を見せよう

 

習慣13〜15はそれぞれ独立した応用的な話です。

 

"臓器としての脳"を意識する

習慣1「生活の原点をつくる」にて紹介される知見ですが、ほぼ全編にわたる前提となります。


生活のリズムが崩れると、脳の機能が低下します。脳の機能を十分に発揮するためには、規則正しい生活が必要です。


では、具体的に"脳を活性化する規則正しい生活"とはどのように作っていけば良いのか?

 

築山さんは足・手・口を動かすウォーミングアップが必要といいます。朝の過ごし方を大事にしなさい、という話自体はわりとよく見かけますが、その理由を分かりやすく説明してくれます。

 

私はここに、多くの現代人が脳に関して最も誤解している点があるような気がしますが、人間の脳は、思考系がそれだけで存在しているわけではありません。人間に至る生物の進化の家庭や、赤ちゃんが人間らしい高度な思考力を獲得していく家庭を考えてみても分かる通り、思考系以前に感情系や運動系などの機能があります。人間はしっかりと二足歩行ができるようになり、手を自由に操れるようになり、口を使って言葉を話すことができるようになって、初めて高度な思考力を発達させることができたわけです。その前段階の機能を十分に動かしておくことが、じつは、その日の思考系を活性化させるのにも有効な手段になります。

 

築山さんが強調するのは、脳はあくまでも生体、臓器の一つであるという点

 

脳も身体と同じようにウォーミングアップが必要ということです。運動前のウォーミングアップで様々な動きを想定して身体を慣らすのと同様に脳のウォーミングアップでも各機能を働かせる方が良いのです。脳のパフォーマンスを上げる、というのは変に高尚なテクニックではなくて、身体の調子を整えるのと同じような感覚である、ということですね。

 

なぜ"書く"ことが脳に良いのか

書くという作業を積極的に取り入れることで仕事の生産性を高めることができます


複雑な仕事に臨むときには、問題解決のゴールやそこに至るまでのプロセスを書きながら考えることで、思考の整理が進みます。頭の中だけで考えていることを視覚化することで、情報を俯瞰して再入力することができ、足りない視点に気づいたり、より良い手段を組み立てることができます。

 

一度書いてしまうことで、アイディア同士を客観的に比較することもできます。すべて頭の中で考えていると、最初のアイディアに引っ張られたり、逆に最初のいつくかのアイディアを忘れてしまったりします。

 

書くという出力の作業をするためには、

 

  • 情報を意識的に入力する
  • 情報を脳の中で保持する
  • 入力した情報を解釈する
  • 脳の中にある情報を出力する

 

という工程が一連の流れとして行われる必要があります。


この一連の作業自体が、いかに出力=書くというゴールを意識することができているかを図るものです。目的をもって作業にあたることで、脳は格段に活性化します。書く作業の場合、目的にあたるのは「人に見せる」になります。

 

報告書やブログが例としてあげられていますが、重要なのは自分だけが分かればいいという意識ではなく、人に伝えることを前提として書くということです。


"書く"以外に"話す"も同じく出力の作業ですが、この場合も意味のない音声を発するよりも人との会話や(なるべく意味を理解しながらの)音読が効果的とのことです。


私も本ブログのように書評を残すようにしているのは読んだ本の内容や本を読んで考えたことを忘れないようにするため、というのが大きな目的の一つなのでこれは非常によく分かります。

 

たとえ話は脳の高等テクニック

"書く"や"話す"の一歩進んだ段階にいかに表現を豊かにするかという課題がありますが、この中に「たとえ話」というテクニックがあります。これが使えるととてもレベルが高い。

 

たとえ話をするためには、

 

  • まずその情報を自分なりに解釈する必要がある
  • また、適切なたとえをするためには、相手の身になって考えなければならない
  • しかも、相手の語彙や経験を想定できていなければならない

 

こうしたステップをすべてクリアする必要があります。


池谷先生の『脳には妙なクセがある』でもたとえ話については触れられていました。例えを使うと相手の脳を活性化することができるため、例えのうまい人はコミュニケーションを主導することに長けている、という話でした。


頭の良い人はたとえが上手いように感じますが、逆にたとえを織り交ぜようと努力を重ねることでこうした力が鍛えられていくこともありうるということですので、みなさんバンバンたとえましょう。

 

アイデアは情報の組み合わせと考える

アイディアは既存の要素の組み合わせである、というのは以前から学んでいました。『アイディアの作り方』という発想術の古典で触れられています。本書で述べられれているのは以前から知っていたことに加えて一歩踏み込んだ話でした。どういうことかというと、

 

「アイデアは情報の組み合わせと考える」というポイントは、他人の知識やアイデアをパッチワークしましょうということではありません。脳にとって情報とは、言葉やデータで表されるものだけでなく、視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚の五感を使って捉えられるあらゆる物事のことです。自然の中にあるものもすべて情報だし、伝統や雰囲気やシステムといった目には見えない情報もあります。
たとえば、「定食屋に一九七〇年代の雰囲気と学校給食的なサービスを組み合わせたらどうなるだろう」とか「医者の世界としては当たり前の判断原則をビジネスに応用させたらどうなるだろう」といった発想でアイデアを考える。
(中略)
クリエイティブな才能というのは、その組み合わせ方のセンスや他の人が目を向けていない以外なところから情報を取ってくる力にかかっていると思います。

 

結論として言っていることはみんなほとんど同じなのですが、五感をすべて使うということははっきりいってまったく意識できていませんでした。どうしても発想が視覚に寄ってしまいがちでした。まさに目からうろこです。

 

まとめ:ライフハックの背景を理解する

読了後の感想としては、『脳には妙なクセがある』を読んだ時とあまり変わりがありません。


良い経験をし、良い刺激を受けることで、脳は活性化し、良い思考が生まれる。ひいては「よく生きる」ことにもつながっていくということ


ただ、この「よく生きる」というキーワードになんだかとても惹かれてしまう一定の人たちにとっては、なかなか面白い本だと思います。この15の習慣という本は簡単に言ってしまえば「ライフハック」な本です。ライフハックが好きな人からしたらよく目にする習慣も多いと思います。


よく言われる生産性を高めてくれそうなあれやこれやが、なぜ良い効果を発揮するのか?ということが丁寧に解説してある本ということです。目にしたものを片っ端から取り入れてしまえる人はこの本を読まなくても、それこそライフハック系の記事を読み漁ったほうが早いかもしれません。


しっかり背景を理解して、納得してから自分の生活に取り入れたいという人にはオススメです。

 

 

 

『脳が冴える15の習慣』を読んだ方や興味を持った方にオススメの本

最後に本書を読んだ方や興味を持った方にオススメの本をご紹介します。

 

池谷裕二『脳には妙なクセがある』

脳には妙なクセがある (新潮文庫)

脳には妙なクセがある (新潮文庫)

 

本文中でも何度か触れた本です。私はこの本を読んだことをきっかけにさらに脳や習慣について考えたくなり本書を手に取ることになりました。脳科学の最近の研究成果を非常に分かりやすく面白く紹介してくれます。内容は非常に学術的ですがとても面白く、知的好奇心が刺激されること間違いなしです。
先日書評記事も公開しておりますので良ければお読みください。

 

daisuket-book.hatenablog.com

 

 

ジェームズ・W・ヤング『アイディアのつくり方』 

アイデアのつくり方

アイデアのつくり方

 

こちらも本文中で少し触れましたが、タイトルの通りアイディアをどうやって考えるのかということについて述べられた本です。発想術に関する本としては古典的な名作です。薄くあっという間に読める本ですが内容は非常に本質的です。事業企画など仕事において「アイディアを考える」という場面が具体的にある方はもちろんのこと、すべてのビジネスパーソンにオススメです。

 

デビッド・アレン『ストレスフリーの整理術』

頭をすっきりと整理して生産性を上げるという点ではこの『ストレスフリーの整理術』もオススメです。脳を冴えさせるというのは臓器としての脳のパフォーマンス自体を上げるという話ですが、『ストレスフリーの整理術』で述べられるのは臓器としての脳だけに頼るのではなく、うまく外部システムやルールの外部化に頼ることでより生産性をあげるアプローチについて書かれています。具体的にはタスク管理法・スケジュール管理法としてのGTD(Get things done)フローというものが紹介されます。これを知っていると知らないとでは仕事の進めやすさに大きな差が出ると考えています。

 

松浦弥太郎『100の基本』

100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート

100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート

  • 作者:松浦 弥太郎
  • 発売日: 2012/09/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

『脳が冴える15の習慣』とは全然別の視点から、習慣や生活について考える本。『脳が冴える15の習慣』においては脳の働きを良くすることで生産性を上げるということが基本視点になっています。つまり資本主義的な発想であるということ。一方で『100の基本』は経済的な生活からは少し距離を置いて、自分の暮らしというものをもう一度見つめ直そう、という本です。著者の松浦さんは長く『暮しの手帖』の編集長を務めた方。「ていねいな暮らし」を考える松浦さんの100個の生活の中での自分なりのルール知ることで、自分の生活も見直したくなるでしょう。

 

メイソン・カリー『天才たちの日課』

こちらも「習慣」や「日課」について書かれた本です。タイトルの通り、さまざまな分野の天才たちの日課について書かれた本です。画家や小説家、科学者、作曲家、映画監督などそれぞれの世界で一流のパフォーマンスを発揮した人たちがどのような習慣を持っていたのか。良い習慣ばかりでなく、悪い習慣や変な習慣など意外な事実を知ることができます。161人の日々の生活を知る中で驚きや共感を感じたり、自分に似た生活習慣を持つ人を見つけたり、楽しく読めますし、話題のタネにもなります。