淡青色のゴールド

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書評『コンバージョンを上げるWebデザイン改善集』コンバージョンを上げるためにWebサイトの何を変えれば良いのか

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書評『コンバージョンを上げるWebデザイン改善集』コンバージョンを上げるためにWebサイトの何を変えれば良いのか

こんにちは。書評ブログ「淡青色のゴールド」へようこそ。本記事は『コンバージョンを上げるWebデザイン改善集』の書評記事です。担当しているウェブサイトやランディングページを改善したいけど何から手をつけて良いか分からないという方にオススメです。

 

 

内容紹介

本書はウェブサイトやランディングページを改善するための手法の一つであるA/Bテストについて豊富な事例をもとに分かりやすく解説している良書です。

 

Amazonの内容紹介から引用します。

 

本書は、Webサイトのデザインを改善するために役立つ実際の改善事例やTipsなど、絶えずWebサイトを改善し続けるためのヒントを詰め込みました。
多くのウェブサイトを改善してきた著者たちが、実際のデザイン事例 Before&After、汎用的に使える改善Tipsやコンバージョンに貢献しやすい施策を解説しています。サイトの種類が異なっても再現できるようにポイントを解説するだけでなく、次の一手のアイデア集として長く活用していだけるように、汎用的な内容を数多く紹介しています。
最後の章ではプロが現場で行う改善のプロセスを解説し、次の一手を打ち続けていくために必要な考え方についてまとめてあります。

 

本書の構成

本書は以下のような構成となっております。それぞれの章の内容を括弧書きで追記してご紹介します。

 

  • Chapter1 デザイン事例集(12企業で実施した47のA/Bテストによる改善事例の紹介。すべてビフォーアフター形式で画面キャプチャありで解説)
  • Chapter2 改善Tips(Webページを改善するためにページのどの部分のデザインを改善するとよいのか、具体的なパーツごとに46のtipsを紹介)
  • Chapter3 コンバージョンを上げるための改善を実行しよう(紹介した事例のような改善施策を実施するためにアクセス解析ツールのどこをどう見れば良いのか初級・中級・上級に分けて解説)
  • Chapter4 コンバージョンを上げるためのサイト改善のプロセス(個別のABテストに留まらずWeb施策改善のためのPDCAを回していくための基本的な視点の解説)

オススメ度

★★★★☆(4/5)

 

本書をオススメする人

本書は以下のような方に特にオススメです。

  • デザイナーではないけれどWebサイトを改善していく必要がある
  • Webサイトの改善を行いたいけど何から手を付ければいいか分からない
  • 「情報発信」「集客する」以外のWebマーケティング施策の考え方を知りたい

『Webデザイン改善集』ということで「Webデザイン」というキーワードが入っておりますが、どちらかというとWebデザイナーの方よりは「Webデザインに詳しくないけれど、Webサイトを改善して成果を出す方法を考えなくてはならない」というような中小企業、小さなチームのWebマーケティング担当者の方が読むと、実践で使えるアイディアがたくさん学べると思います。

もちろんWebデザイナーの方にもオススメできます。特に紙モノのデザインが中心でWebには不慣れだという方なんかには良いでしょう。Webサイトにおける「コンバージョン重視」というフィルタを通してデザインアイディアを考える視点を具体的に掴むことができますので、Webサイトやランディングページの制作に活かしていくことができるはずです。

『Webデザイン改善集』の画像

電子書籍版は固定レイアウト型のようなので紙版の方が使いやすいと思います

 

「改善」に視点を絞っているからマーケティングの現場で実際に使える!

「Webデザイン」に関する本は非常にたくさんありますが、数ある類書の中でも編集の視点が非常に明確なことが本書の特徴で、「コンバージョンを上げるために」「デザインを改善する」「事例集」というそれぞれの視点が明確です。「良いデザインをする、作る」ための本なのではなく、あくまで「改善」のための施策がまとめられています。

この視点の絞り込みは重要です。Webデザイナーの方であれば、日常的にWebサイトを制作する機会が多くあるので「良いデザインを作る」ための考え方やtipsを使うことができますが、「コンバージョンを上げたい」と日常的に考え頭を悩ましている多くのマーケター、マーケティング担当者にとってはいちからWebサイトやランディングページを作成する機会よりも、「すでにあるサイトをいかに改善するか」に向き合う時間の方が多いのです。でも世の中には一からWebサイトを作る、良いデザインを作るための本の方が多いのです。もちろん、一から良いデザインの作り方をきちんと学んだ上で自社サイトの課題を洗い出す、という流れで進めることができるのであればそれは素晴らしいのですが、なかなかそのような時間は取れないのが常です。

だからこそ本書はマーケティングの現場で使いやすいのです。

大きく紙幅が割かれているChapter1では実際の企業サイトを紹介しながら改善事例が解説されます。事例紹介の分析視点、紙面の構成が一貫しているため読みやすく理解しやすいです。 

「何のコンバージョンポイントを目指して」「何が課題で」「どのような仮説を考えて」「デザインをどのように変えることで」改善したのか

この一連の流れが、デザイン変更のビフォーアフターの画面キャプチャとともに掲載されています。

取り上げられている企業もそれなりに多岐にわたり、さまざまな業態、業種のサイト、ページが揃っているので自分が担当しているサイトによらず参考になる部分が見つかるはずです。

Webサイトの改善をしたいならまずは事例を知るべき。それも「たくさん」知るべき

私は普段コンサルタントという仕事をしているのですが「事例を教えて下さい」という質問にはうんざりするほど出会います。みんな事例大好き。でも私は大抵の場面においてこの質問が嫌いです。事例を知ったところで活かしようがないことがほとんどだからです。とくに事業戦略などにおいての事例参照はあまり意味がありません。そもそも戦略というのは個別具体的な状況、環境における他者との差異をいかに作るのかという話なので事例を参考に戦略をつくろう、というのは本末転倒も甚だしいと思うのです。

ただし、「コンバージョンをあげるためのWebデザイン」であれば話は別です。個別具体的な打ち手、しかもWeb施策に関するものであればどんどんと事例を知った方が良いと考えています。いくつかの観点から説明していきます。

①Webサイトには環境、状況にある程度の共通性があるから事例を活かせる

コンバージョンを上げるためのWebデザイン改善というのは具体的に言えば、Webサイトにおける「クリック率向上」や「直帰率改善」など個別指標の改善を意味していることがほとんどです。それぞれの企業やサービスにおいてターゲットが異なっていたり、購入や利用の文脈が異なるのは当然ではありますが、Webサイトを通じて「購入」や「申し込み」といったコンバージョン行動を取るという状況やその環境にはある程度の共通性があります。

②コンバージョンに大きく影響を与える要素の考え方はある程度パターン化することができる

そして「状況や環境にある程度の共通性がある」ということは、視点を変えれば、WebサイトやWebページの構成要素は特定の役割を持ったパーツに分解して整理することができるのであり、そもそもそうしたパーツの組み合わせによってWebサイトが構成されているということです。ヘッダー、ファーストビューといったページの中の相対位置や役割からの分類であったり、画像やボタンといった個別の要素からの分類などです。

そしてコンバージョンを上げるための具体的な施策というのはこれらの個別の要素それぞれをどう改善するか、あるいはそれらの組み合わせ方を改善するか(組み合わせることでストーリーを作り説得力を増す、など)を意味します。そして、コンバージョンに影響を与える度合いは構成要素によって変わります。例えばページの下部の要素より、ファーストビューの方が多くの人の目に止まるので改善効果は高い、といった具合です。また、改善したいのが直帰率なのか、購入単価なのかなど何を目的とするかによってその要素に直接影響を与えるであろうと考えられる要素はある程度絞り込むことができます。このように改善したいことの内容によって、ページのどこにあたりをつけて改善策を検討すれば良いか、を考えられるようになるとWebサイト改善の力を格段に増すことにつながるのです。

この意味では本書は、事例ごとに「何の指標を改善するために」「ページのどの箇所を」改善したのか、が分かりやすくまとまっているため改善指標とページの要素のパターンを溜め込むことができます。

③パターン化されているからこそ数を知ることで引き出しを増やすことができる

さらに、「ページ改善の要素や視点のパターン化」が可能だからこそ、事例をたくさん知ることに意味があるのです。むしろ独自の施策アイディアを練るためにこそ、事例の数を知って引き出しの数を増やす必要があるといえます。発想術の本として有名な『アイデアのつくり方』では「アイディアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と言い切っています。特にパターン化することが可能で、状況や環境にある程度の共通性があるWebサイトにおいてはなおさらです。自社サイトでの改善アイディアを出したいのであれば、まずはたくさんの改善事例を知って、改善アイディアの考え方や視点の持ち方を自分の中にしっかりインストールすることが大切です。

 

以上でご紹介したように、課題の発見や仮説構築の力を養うためにこそ事例をたくさん知って発想の取っ掛かりを見つけられるようにしたい方は、この本を読んで一気に引き出しを増やすことは良いことだと思います。この本読んでからであれば、自分で直接ベンチマークサイトを見に行ったときにも「この部分は自社サイトでもテストができるかも」などと発想できることが増えるはずです。

GoogleAnalytics活用の具体度合いが初心者にありがたい

本書の中心はあくまでChapter1の事例紹介と、Chapter2の抽象化したTips紹介(この部分はまさに「パターン化」が可能であることの証左ですね)ですが、個人的に本書をオススメしたい気持ちになったのは、後半のChapter3・4で改善プロセスを回していくためのプロセス自体の解説や、GoogleAnalyticsでどの指標をどのように見れば良いのかについての解説が簡単にではあってもなされているからです。といいますか、それが無ければ本書全体の価値が無くなるほど大事な部分だと考えています。

前半の事例読んでいるだけでは「これで(おそらく本書の想定読者であろう初心者に)伝わるのだろうか」と感じていたのですが、後半までちゃんと読めば自力で改善に取り組むとっかかりになると感じますし、むしろGoogleAnalyticsの分析視点や注目指標の解説などは下手にGoogleAnalytics自体の解説本を読むより改善したい指標や目的の視点を絞っている本書の方が実践レベルで役に立てやすいようにも感じます。

 

ということでWebサイトの改善をしていきたいけど、何をどこからやったら良いか分からないマーケティング担当者の方にはオススメです。SNSや広告やるなど「集客施策」に力を入れることは思いついてもサイト自体をどうすれば良いかはなかなか勉強しないと発想しにくいですからね。まずはこの本を一冊どうぞ。

 

これが改善されたらさらに最高だった4つの点

以下はちょっと不満だった点や今後改善して欲しい点です。以下の点を含んでたとしてもオススメできる本であることには変わりないですが、今後の改訂などに期待を込めて。

①企業サイト事例のキャプチャの解像度が低かったりモザイク処理?されてて肝心のデザインが分かりにくい箇所がある

諸権利など色々事情はあるのだと思いますが、あくまでWebデザインの辞令集なのだからそこら辺クリアしている事例で集めて欲しいですね。特に1本目の事例からキャプチャの解像度が低かったことは読んでて結構テンション下がりました。(その後は質の良い画像も多かったのでテンションも戻りましたが)

②施策難易度の評価基準が不明確

各事例には★から★★★★★までの「施策難易度」が付けられているのですが、この基準がよく分かりません。その施策を実行しようとした場合の「制作や導入の技術的側面」なのか「社内調整など制作以外のことも推測して」なのかそれともそもそも「その施策の必要性にたどり着く分析や仮説構築の難しさ」なのか。色々自分なりにどの視点での評価なのかそれこそ仮説を持ちながら読んだけど、よく分かりませんでした。もしかしたら担当している筆者によって曖昧なの、いやまさかそんな適当なことが、、というぐらいには混乱しました。分かりやすさのための★評価なのだとは思いますがむしろ分かりにくくしてる気がします。

③改善率の数値が分かりにくい

各事例には例えば「CVポイント:予約」を目標とした改善で「61.7%アップ!」などと書かれています。これも分かりやすさのためだとは思いますし、諸事情から実数自体を掲載することは難しいのだとは思いますが、61.7%アップって何でしょう。CVRなど割合の指標の改善率を表すのに割合使うのは混乱の元ではないでしょうか。例えばCVRが10%から20%に上がったとしてそれを「10%アップ」とは言わないはずです。「10ポイントアップ」などではないでしょうか。それとも割合できちんと表現してあってこの場合であれば10ポイントアップなのではなくあくまで「100%アップ」なのか。でも、だとすると紹介される事例の中には「2%アップ」とか改善効果が非常に少ないものがけっこうな数にのぼることになってしまいます。まぁ実際問題のWebテストの事例は数値としては小さい改善幅のものも少なくないのが実際だとは思いますが、そういうシビアなことを伝えるのが本書の目的ではないと思いますし、ここはちょっと謎です。

④失敗事例もいくつか欲しかった

事例紹介は本書に限らずそうですが基本的に全部成功事例です。でも実際やってみると失敗もします。むしろ失敗の方が多いかもしれない。本当に読者の実践やその後の継続につなげるのなら、「このように考えたけどダメだった」「ダメだったのはこういう要因があったからではないか」「仮説とは違ったがこういうことが分かって次の施策につながった」というような失敗事例からの分析思考の過程が2、3の事例でも良いので紹介されていたら本書の評価がもっと高くなっていました。

 

以上4点は本書が不満だったところです。この4点が改善されていれば文句なしの★5評価でした。とはいえ先にも書いた通りこれらの点があったとしても良書であり、オススメしたい本であることには変わりないことは繰り返しお伝えしておきます。

 

『コンバージョンを上げるWebデザイン改善集』を読んだ方にオススメの本

最後に本書を読んだ方や興味を持った方にオススメの本をご紹介します。

小川卓『現場のプロがやさしく書いた Webサイトの分析・改善の教科書』

まず一冊目は『コンバージョンを上げるWebデザイン改善集』の監修も務めていらっしゃる小川卓さんの本です。小川さんの本は良書が多いのですが、Web施策に不慣れなWebサイト担当者、Webマーケティング担当者にオススメする機会が多いのが本書です。『教科書』と冠されているだけあって、非常に丁寧ですし、Webサイトを分析して改善するための視点を網羅的に学ぶことができます。『コンバージョンを上げるWebデザイン改善集』が「Webデザイン」に特化していたのに対して本書は、検索流入やメール、SNSなどの集客施策についても学べますし、施策を行った後にどのように振り返りをして改善策を考えれば良いかという「分析」の視点についても分かりやすく学ぶことができます

水野学『センスは知識から始まる』

続いてはくまモンの生みの親であるアートディレクター、水野学さんの『センスは知識から始まる』です。本記事でも「事例をたくさん知ること」によって改善のためのアイディアを発想することができるようになると書きましたが、そうした考え方をより分かりやすく教えてくれる本です。デザインという分野に対しては「自分にはセンスがない」と諦めてしまっている方も少なくないと思います。私もそうでした。が、そうではない、というのが水野さんの主張です。「センスは学ぶことができる」し、「学ぶことでしかセンスは磨けない」というのです。デザインやセンスに対してコンプレックスを抱いてしまっている方にぜひ読んで欲しい一冊です。

書評記事も書いておりますので良ければお読みください。

スーザン・ワインチェンク、武舎広幸『インターフェースデザインの心理学』

続いては『インターフェースデザインの心理学』です。Webデザインについてさらに学びを深めたい方にオススメです。『コンバージョンを上げるWebデザイン改善集』は基本的にWebテストによる改善事例であり、実際のユーザーの反応を見て決めるというものですが、新たなページや新たなコンテンツを作るときや改善アイディアを考えるときには、「きっとこれが良いだろう」とユーザーの感情や行動を想像しながらアイディアを形にしていくことになります。そうしたときにWebサイト等を利用するユーザーの心理を学んでおくことで、勘に頼るのではなく、一定の根拠を持って考えられるようになります。タイトルだけだと難しそうですが、見開きページごとに分かりやすく解説がなされており非常に読みやすい本です。

ドナルド・A.ノーマン、岡本明『誰のためのデザイン?』

Webサイトからは少し離れて、工業デザイン全体について考えを深めることができるのが本書です。『誰のためのデザイン?』というタイトルの通り、デザインとはそもそもユーザーに特定の目的を達してもらうためのものであるということを考える本です。使用においてミスが発生するのであればそれは使う人が悪いのではなくデザインが悪いのであるという考え方は、デザインやマーケティングに関わるすべての人が身につけるべき考え方だと思います。視覚情報のあり方や脳の情報処理の仕方など認知科学の知見をもとにした本ですが、専門知識がない方でも読むことができますし、仕事は置いておいても単純に知的好奇心を刺激してくれる本としても楽しむことができます。

『いちばんやさしいWebマネジメントの教本』

Webサイトを継続的に改善していくためには、自組織の中でさまざまなコミュニケーションを取っていく必要がある場合がほとんどだと思います。自分一人がWebサイト改善の視点を身に着けてもそれだけでは進めていけない、と悩む方にぜひオススメしたいのが本書です。「Webマネジメント」という言葉自体はあまり聞き慣れないと思いますが、Webサイトを改善していくために社内をいかにマネジメントしていくか、という話です。具体的には、改善アイディアを発想したり、整理するためのワークショップのやり方などが解説されています。本書が良いのはデザイン面だけではなく、ターゲットの絞り方という戦略の話や、運用の話まで含めて課題を洗い出し、整理するための視点を持っていることです。中小企業や小さいチームではあらゆるレイヤーの課題が一緒くたに出てくることも少なくありませんので、そうした課題の整理の仕方を学ぶことには大きな意味があると感じます。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。