本から本へつながる書評ブログ『淡青色のゴールド』

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デジタルファンドレイジングを推進したい方にオススメの本20冊

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デジタルファンドレイジングを推進したい方にオススメの本

こんにちは。書評ブログ「淡青色のゴールド」へようこそ。近年では非営利組織の資金調達、いわゆるファンドレイジングにおいても、デジタルマーケティングの知見を活用した手法が取り入れらることも増えてきており、単にHPやSNSを使って情報発信をするだけではない手法を学んでいくことが必要となってきています。本記事では、ファンドレイジングを始め非営利組織のコンサルティングを生業としている筆者が「デジタルファンドレイジングを推進したい方にオススメの本」と題し、NPOのファンドレイジング担当の方にオススメしたい本をご紹介します。トピック・テーマごとに分けてご紹介しますので、ご自身の関心や課題としているところから一冊でも読んでみていただけると嬉しいです。

 

データを分析し、活用するとはどういうことかを理解するために

まずはじめにご紹介するのはデジタルマーケティング、Webマーケティングの基本的な考え方を理解するための本です。いわゆるアクセス解析と呼ばれるものに関する本が多めです。デジタルファンドレイジングというのは、デジタルマーケティングの知見を取り入れたファンドレイジングのことなのですが、デジタルマーケティングとWebマーケティングの厳密な違いなどをしっかり定義されている書籍等もあまりありませんし、まだまだ流行り言葉的な感も否めないからか「デジタルマーケティング」というキーワードをタイトルに冠している書籍も玉石混交というか玉少なめな状況ですので、まずはこのパートでご紹介するようなデータを分析し施策を検討するとはどういうことかを基本的なところから教えてくれる書籍を読むことがオススメです。

『入門 ウェブ分析論(増補改訂版)』(小川卓)

私は今でこそ上級ウェブ解析士の資格も取得し、アクセス解析を仕事で引き受けることもあるのですが、アクセス解析的な考え方の基本的な視点の大半は資格取得以前に読んだこの書籍によって身につけました。GoogleAnalyticsの画面や機能を具体的に解説している箇所も多いのですが、個別の機能や画面というよりも、アクセス解析ツールで何ができるのか、分析するとはどのようなことなのかをイチから理解することができます。本記事ではたくさんの本をご紹介しますが、どれか一冊ということであれば本書をぜひ。分厚いですが、業務としてWebに携わるなら絶対に損しません。

『Webサイトの分析・改善の教科書 (改訂2版)』(小川卓)

『入門 ウェブ分析論』と同じく小川卓さんの著作です。『ウェブ分析論』がGoogleAnalyticsなどのアクセス解析ツール上で見える数字を元に考えていく視点だったのに対して、本書はメール、SNS、ランディングページなど施策ごとに分析視点の持ち方を分かりやすく説明してくれます。NPOにおいては一人の担当者が多くの施策を担当しなければならないことも少なくありませんので、すでにやっているさまざまな施策の改善について考えたいという方にはオススメです。

『いちばんやさしいコンバージョン最適化の教本』(深田浩嗣)

KPIなどさまざまな指標についての考え方について学びたい方にオススメです。例えば「寄付金額100万円」という実績があったとして、それを120万円に増やすためにはどうすれば良いでしょうか。施策案をどんどんと考えられることも大切ですが、「寄付金額100万円=HP訪問者10,00人×寄付確率10%×平均寄付単価10,000円」と分解し、何をどう改善すれば120万円が達成できるだろうか?という視点を持てるようになると施策を考える解像度はグッと上がります。本書ではこのような「指標の分解(足し算・掛け算の分解)」の考え方を分かりやすく解説してくれます。

『Googleデータポータルによるレポート作成の教科書』(小川 卓、江尻 俊章 監修)

ファンドレイジングを組織として推進していくためには、目標の達成状況や打った施策の実績などを組織の中で適切に情報共有し、意思決定を繰り返していくことが重要です。そこで必要なのが「レポート」です。ファンドレイジングやWebの担当者の方は徐々にGoogleAnalyticsを始めとしたツールに慣れていくかもしれませんが、直接担当している方でないとWebツールはどこをどう見れば良いかわからないですし、そもそもログインしてもらえません。組織として見るべき数字、そこから何を読み取り、どんな意思決定をすれば良いか、レポート作成の勘所を掴むことができると組織としてのPDCAサイクルの質があがります。本書はGoogleデータポータルというツールを題材にしていますが、データポータルは使わずにスプレッドシートでも全然構いませんので、レポート作成について学びましょう。

「データ」「デジタル」の前に事業に関わる「数字」への苦手意識を克服するために

続いては先にご紹介したような書籍やそこで扱われているテーマを含めてそもそも「数字」があまり得意ではないんだよな…という方向けのオススメ書籍です。

『数字で考える力』(佐々木裕子)

KPIやデータの力を活かしていくためには基礎スキルとして数字で考える感覚を身につける必要があります。数字を使って考えることはファンドレイジングに限らず、職業人としての基礎として鍛えておきたい力ですので、ビジネス上での数字の考え方に苦手意識のある方はこちらの書籍を一読することをオススメします。

データを取得する環境整備・ツール理解のために

続いてはそもそもの環境を整えるためのツールに関する理解を深めるための書籍です。先にデータを分析する視点について学ぶ書籍をご紹介しましたが、そもそもデータを活用するためには、データを計測し、分析するためのツールを導入することやその活用方法を理解することが必要です。具体的にはGoogleが提供するGoogleアナリティクス、Googleサーチコンソール、Googleタグマネージャーの3つを活用できるようになることが優先です。とはいえ、この辺りは自分で勉強して全部自分の手でやるよりはエンジニアさんやHP制作を依頼している制作会社さんなどに依頼する場合も少なくないと思います。もちろん、どのツールを何のために導入するのか、導入した方が良いのかについては依頼前に自組織内で判断する必要がありますので、導入方法や機能を完全にマスターするためにというよりは、ツールの必要性やそのツールで何ができるのかの大枠を掴むということを目的として位置づけていただけると良いかと思います。あるいは何かそのツールを使ってやりたいことや調べたいことが出てきた際に、参照するという辞書的な意味合いで所持しておくことも有用です。そして、これらのツールはその機能や画面がどんどんアップデートされていきますので、以下のオススメは参考にしていただきつつも、なるべく新しく出版されたもののうち、自分が使いやすいと感じるものを選ぶことが大切です。

『「やりたいこと」からパッと引ける Googleアナリティクス4 設定・分析のすべてがわかる本』(小川 卓)

Googleアナリティクスについては、2023年夏にはユニバーサルアナリティクスの計測が停止し、Googleアナリティクス4に一本化されていきますので4の解説本をご紹介します。まずはアクセス解析のパートでも何冊かご紹介した小川さんの著作です。やはりオススメです。

『できる逆引き Googleアナリティクス4 成果を生み出す分析・改善ワザ 188』(木田 和廣)

続いては本記事執筆時点ではまだ発売前なのですが、私自身もほぼ間違いなく購入する本としてご紹介します。この「できる逆引き」は現行のGoogleアナリティクス(ユニバーサルアナリティクス)版を所有しており、非常に使いやすかったのでGA4版も期待大です。

『マーケティング/検索エンジンに強くなる Google Search Consoleの教科書』(大本 あかね、菊池 崇)

続いてはGoogleサーチコンソールに関する書籍です。サーチコンソールは自組織のサイトがどのようなキーワードで検索されたときに表示され、実際にクリックされているのかといったいわゆるSEO(Search Engine Optimization)の対策に活用できる他、サイト上のエラーを検知してくれるなどサイトの保守点検的な役割も果たしてくれるツールです。

『現場で使える Googleタグマネージャー実践入門』(神谷 英男、石本 憲貴、礒崎 将一、小川 卓 監修)

続いてGoogleタグマネージャーに関する書籍です。Webサイトと何らかのWebツールやサービスを利用、連携する場合にはWebサイトのHTML上に「タグ」と呼ばれるコードを設置することが多いですが、タグマネージャーはこれらのタグを一括管理することができるツールで、タグマネージャーを一度導入すれば以降は新たなツール導入の際にHTMLを直接編集することなくタグマネージャー上から導入や設定変更を行うことができるようになります。ネット広告などの利用をする際にも成果の計測のためにタグ設置が必要ですので、広告利用などを検討する可能性がある場合には早めに導入しておけると良いでしょう。

SNSの活用について考えるために

続いてはSNSに関する書籍です。NPOの情報発信においてSNSは非常に重要なツールですが、それはファンドレイジングにおいても変わりません。

『SNSマーケティング(第2版)』(林雅之、本門功一郎)

Facebook、Twitter、Instagram、LINEの主要SNSに加えてYouTube、Tik Tokまで網羅しており、通常のアカウント運用に加えて各SNSの広告活用についての記述もあるなどSNSをビジネス活用していくための基本的な視点を網羅的に学ぶことができます。マニュアル作成の仕方の解説や組織内での意思決定をスムーズにするための考えるべき項目のフレームワークの提示など組織での運用体制の構築を視野に入れた記述が多い点もオススメできる点の一つです。

『僕らはSNSでモノを買う』(飯髙悠太)

ULSSAS(ウルサス)というSNS全盛時代の顧客の購買行動プロセスを提示したことで話題になった本。『SNSマーケティング(第2版)』が組織としてのSNS運用という視点で書かれているのに対して、本書は「SNSはユーザーにどのように使われているか?」というそもそもの文脈の捉え直しをさせてくれます。その上でSNS上での口コミ(発信してもらう)を仕掛けていくとはどういうことかを考えられるようになります。

SNSに関する書籍は上記2冊も含め以下の記事で詳しくご紹介しておりますので良ければお読みください。

 

daisuket-book.hatenablog.com

 

寄付に関するWebページの作成、改善について考えるために

続いてはいわゆるランディングページやその集客のための広告を活用するような場合の、改善策を考える視点を鍛えることができるような本です。

『コンバージョンを上げるWebデザイン改善集』(小川卓監修)

寄付獲得専用のランディングページを持ち、改善していく必要がある担当者には非常にオススメです。ランディングページ(に限らず特定の施策の)改善策を自分で考えられるようになるためには、自組織のページをひたすら眺めるだけでは不十分で、同分野のあるいは他分野のたくさんの事例を知り発想の観点や引き出しを増やすということも一つの方法です。本書は具体的なWebページ改善のためのA/Bテストの事例とその背景にある発想(どのように現状を分析し、改善案を検討したのか)が具体的に書かれていますので、Webページの改善ということについてイメージをつかみやすいと思います。

書評も書いておりますので良ければお読みください。

 

daisuket-book.hatenablog.com

 

『ネット広告クリエイティブ“打ち手"大全』(辻井良太、宝田大樹)

こちらはちょっと番外編というか、少し優先順位は下がります。というのもNPOで広告運用に力をいれる場合、運用自体は外注することがほとんどでNPOの職員が直接運用広告の実務自体を対応することはないからです。もちろん担当職員として広告代理店等の外注先の担当者と成果改善に向けた話をしていくことは求められるのでその上で一定の知識は必要になりますが、その知識はネット広告自体に関する専門知識よりは「データを分析し、活用するとはどういうことかを理解するために」で紹介したようなウェブ解析そのものについての全般的な視点(と自組織のNPOとしての戦略とをあわせて語れること)です。ですので、広告自体の専門知識の優先順位は下がる(だからこそ外注するわけですし)のですが、それでもさらに勉強したい、という方であれば下手にネット広告の総論的な入門書を読むよりは相当に具体的で実践的な書籍を読むのがオススメということで選んだのが本書です。

デジタルに限らず寄付マーケティングについて考えるために

デジタルファンドレイジングを推進するにはまず前提としてファンドレイジングとは何かといったことや、自組織にとって寄付を募るとはどういうことかということの検討や共通認識の醸成はすでに済んでいることが必要だと個人的には思いますが(少なくとも私がコンサルティングをする際はこのステップを飛ばすことはありません)、昨今はWeb施策への期待や注目も非常に大きくなっており、組織としてのファンドレイジングのスタートとデジタルファンドレイジングがほぼ同時というかデジタルやWeb中心で検討が始まるということも少なくないかと思います。ただ、そうだとしても寄付とは何かということや、あるいはデジタル以前にマーケティングとは何を考えればよいのだろうか、ということについて考えるステップを挟むことができれば組織としてのファンドレイジングは絶対に質が高くなりますので、担当者としてあるいは組織としてこうした観点に自信がないというかたはこのパートでご紹介するような本も合わせて読み、考えることをオススメします。

『サービス・マーケティング入門』(山本昭二)

まず一冊目はサービスマーケティングについての書籍です。「寄付」は形ある製品ではありません。マーケティングとは「売る仕組みを考えることだ」という説明がなされることもありますが、では何を売るのかというと、大きく「製品」なのか「サービス」なのかで分けることができます。寄付を募るファンドレイジングは言ってみれば「寄付体験」というサービスを届けることだと言えますので、製品のマーケティングとは違った発想が必要になる部分もあります。「マーケティング入門」のような概論書には特にその辺り説明なく、製品のマーケティング前提で書かれていることも少なくありませんので、マーケティングについて基礎から勉強したいファンドレイザーの方はサービスマーケティングに考え方触れてみることもオススメです。

『はじめてのカスタマージャーニーマップワークショップ』(加藤希尊)

続いてご紹介するのはカスタマージャーニーマップに関する書籍です。寄付者が団体を知り、共感し、寄付するまでにどのような行動や気持ちの変化があるのかを整理するカスタマージャーニーマップの作成もファンドレイジング施策の立案には非常に有効です。カスタマージャーニーマップに関する書籍も複数ありますが、本書の特徴はタイトルに「ワークショップ」というキーワードが入っている通り組織内でワークショップ形式で検討することを念頭に置いて書かれているので、ワークショップ自体を開催するかどうかはともかくとしても組織内で意思決定を行っていく際に参考になる視点が多く記されています。

書評も書いておりますので良ければお読みください。

 

daisuket-book.hatenablog.com

 

『実践ペルソナ・マーケティング』(高井紳二)

続いてはタイトルにも記載のある通り「ペルソナ」についての実践的な解説書です。組織として初めて寄付を募っていくというような初期段階ではあまり細かなペルソナを作るよりは、実際的に自組織のステークホルダーやアプローチできる市場から考えることのできるターゲット(ターゲティング)について考えた方が良いと思いますが(そうした段階にある組織の方は次に紹介する本でターゲティングの考え方を学ぶことをオススメします)、ある程度寄付者や会員を募ってきて次の段階に行きたいという場合には自組織の寄付者像を明確にするために寄付者インタビューなどをもとに「寄付者ペルソナ」を作成することが有効で、ペルソナ作成の方法が詳しく解説されている本書が実践的でオススメです。

『NPOのためのマーケティング講座』(長浜洋二)

本書はタイトルの通りNPO向けにマーケティングの考え方を解説した書籍です。寄付(支援者を募るマーケティング)だけでなく、組織自体や活動の認知を広げ受益者向けにマーケティングしていくことも含めて解説している点と、マーケティング戦略立案の基本的で協力なフレームワークである4C(本書内ではNPOに適合しやすいようにカスタマイズした5Cで解説されます)の活用方法を知ることができるという点で、さらにNPOの事例が非常に豊富だという点からNPOでマーケティングに関わる方には非常にオススメです。

書評も書いておりますので良ければお読みください。

 

daisuket-book.hatenablog.com

 

「共感」してもらうとはどういうことかを考えるために

最後はデジタルやWebといったことからはさらに離れますが、直接対面で言葉や場の空気などを介することなく寄付という行為が成り立ってしまうデジタルファンドレイジングだからこそ、寄付をしてもらうことの軸になっているはずの自組織やその受益者に対する共感とはどういうことなのだろうかという点についてはしっかりと向き合っていただきたいです。

『ファンベース』(佐藤尚之)

ファンドレイジングは単にお金を集める仕事ではなく、自組織に対する「ファン」を増やす仕事であるとも言えます。寄付は寄付者から一方的に資金をいただくだけの関係ではなく、NPO側からもビジョンの実現に参加するという体験や社会課題解決の成果という「対価」を得るという関係も同時に成り立っており、寄付者はその体験を通じて組織に対してのファンになると捉えることができます。顧客(寄付者)をファンと捉え、長期的な関係構築のための発想をしていくという本書からはNPOの寄付担当者多くを学ぶことができます。

書評も書いておりますので良ければお読みください。

 

daisuket-book.hatenablog.com

 

『FACTFULNESS』(ハンス・ロスリング, オーラ・ロスリング他)

本書は人々が思い込みをしやすいモノの見方を示し、データを元にどのように正しい判断をしていくべきかを伝える書籍ですが、ファンドレイザーの方にはぜひ一度読んでいただきたいです。寄付マーケティングにおいてはしばしばこれらの思い込みをあえて発生させることで共感を得ようとする手法も見られます。社会的な弱者の”可哀想な”状況をアピールすることで注目を集める広告クリエイティブは多くの方が思い浮かぶのではないでしょうか。本書ではなぜそれらが強力であり、多くのNPO・NGOが長年そうした手法を使い続けたのかの背景の一端が解説されています。データや数字を扱いながら倫理的に正しくあることと、マーケティング効果を最大化することを考えるきっかけとしてご一読をオススメします。

『反共感論』(ポール・ブルーム)

データやデジタルとは少しズレますが、ファンドレイジングが実践される場でがしばしば武器やキーワードとされる「共感」という言葉についてはぜひ一度批判的に捉え直してみることをオススメします。「共感」という言葉の持つ意味の広さや良い点・悪い点を理解した上で、その上で、自身や自組織がどのように「共感」という言葉を使うのか。意識的に使われる共感が増えていくことを願います。

以上、いかがでしたでしょうか。

本記事では「デジタルファンドレイジングを推進したい方にオススメの本」と題し、オススメの本をテーマ別にご紹介してきました。デジタルファンドレイジングはどこまでやるべきか、ということが組織の状況によっても異なりますので、デジタルやWebを活用したファンドレイジングに挑戦するからといってご紹介したすべての本を読む必要はまったくありません。テーマごとの私のコメントを参考にしながら読んでみたい書籍が見つかれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。