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書評『チームが機能するとはどういうことか』リーダーの役割をリフレーミングする一冊

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書評『チームが機能するとはどういうことか』リーダーの役割をリフレーミングする一冊

こんにちは。daisuketです。本記事は「チームビルディング」や「リーダーシップ」に関する名著『チームが機能するとはどういうことか』の書評記事です。

 

 

内容紹介:チームを率いるすべての人にオススメ 

 

この本はタイトルの通り「チーム」についての研究結果をまとめた本です。

 

チームとしてうまくまとまるチーム、まとまらないチーム。うまく結果を出せるチーム、出せないチーム。

 

誰しも社会生活の中で色々なチームを見たり、あるいは自分で経験したりしてると思いますし、チームのあり方や運営ということに課題や悩みを抱えている方も少なくないと思います。チームのマネジメントに興味のある人にはとてもオススメできる1冊です。

基本的にビジネス書に分類される本だと思いますし、ベースとなっているのはさまざまな経営理論の知見です。しかし、チームというのはビジネスの場だけのものではもちろんなくて、NPOなどのNon Profitな様々な組織にも活かせますし、学校の教室運営などにも応用可能だと感じる内容が盛りだくさんでした。

チームが機能するとはどういうことか

大量の付箋を貼りながら読みました

オススメ度・本書をオススメする人

オススメ度

★★★★★(5/5)

本書をオススメする人

本書は以下のような方には特にオススメです。

  • マネージャーやチームリーダーを任されたけど、うまくチーム作りができない
  • 「リーダーシップ」について勉強したい

最新の理論をチームにおける「リーダーシップ」の観点から再定義

この本の最も重要な価値はリーダーの役割を再定義したこと、だと感じます。

古今東西の様々な経営理論、リーダーシップ論に加えて、心理学などの最新の成果を盛り込みつつ、著者自身によるインタビューや実験などの研究結果の集大成と言える本です。いろいろな理論を参照しているのでマネジメント論の本などを読み慣れている人にとっては、前提情報の整理自体は目新しいものではないと思います。 

  • チームが立ち向かう課題は分類することができる
  • ルーチン業務、複雑な業務、イノベーションの業務
  • それぞれのチームが関わる課題が何なのかを見極めることが大切である
  • 業務によって目指すべきチームの形は変わる
  • いまの時代、これまでのルーチン業務で対処できる問題ばかりではなく、イノベーションの業務が増えている
  • イノベーションの業務には上手に失敗し、早く成功する「学習する組織(チーム)」を作ることが大切である

などなど。

特に後半、「学習する組織」の議論は、システム思考などとも呼ばれ組織論やイノベーション理論の分野では非常に重要なテーマです。リーンスタートアップの考え方などとも重複する内容ですね。本書の中で理想事例として紹介されているものもトヨタの改善志向であったり、デザインファームIDEOであったりと、組織論としてはおなじみの顔ぶれが並びます。 
ただ、『リーンスタートアップ』を読んだ時にも感じたのですが、「うん、そういう体制作れたらすごいよね」とは思うものの、「じゃあ実際にどうしたらいいの?」という疑問には答えが出ず、結局打ち手を打てないということになりがちです。 視点の持ち方やその大切さはわかったけれど、「チーム」であるからには自分一人その大切さが分かっても仕方がないのです。リーンなチームに生まれ変わるためには、「チームメイトにどう働きかけていけばいいか」という部分に答えが出せなければいけないのですが、そこに踏み込んでいないと感じる本が多くあります。
 一方で本書は、その点にしっかりと答えを出します適切なチーミングを発揮していくためにリーダーが果たすべき役割を示すことに重点を置いています。各章の終わりには必ず「リーダーシップのまとめ」が行われ、さまざまに展開する議論をリーダーとしての役割から整理し直してくれます。  

 

「フレーミング」の大切さ

自分自身がどのような課題をもって、どのような組織に関わっているかによって、深く考えるポイントは人それぞれなのではないかと思いますが、 私が特に大切だと感じたのは「フレーミング」というリーダーの役割です。 
フレーミングとは、チームをどのような組織として定義づけるかということなのですが、そこにはいくつかの段階があるといいます。 

リーダーの役割…リーダーは専門家としてフレーミングするか、それともメンバーと相互依存する存在としてフレーミングするか
チームの役割…チームのメンバーは技術に長けた補助スタッフとしてフレーミングするか、権限を与えられたパートナーとしてフレーミングされるか
プロジェクトの目的…プロジェクトの目的が、受け身で消極的なものとして伝えられるか、向上心あふれるものとして伝えられるか

ビジネスの分野でもノンプロフィットの分野でも何かイノベーティブな課題に立ち向かうチームを作ろうとしている場面で「これから新しいことやるから、よろしく」というような漠然とした声掛けでチームがスタートすることはよく目にします
 もちろん声をかけているリーダー自身も、良いチームを作ろうとして声をかけているのですが、うまくいかないことがあるのは、きっと上記3つの要素のうちのいずれかのフレーミングが欠けているということでしょう。
 例えばリーダー自身の関わり方が微妙であったり目的自体の設定が微妙であったり。これまで関わってきたいくつかのチームを振り返って、なるほどと目からウロコが落ちました。
 また、チームの役割という部分もなかなか難しくて、メンバー間に理解の差があるとたぶんうまくいきません。自分たちは権限を与えられたパートナーなんだ、主体的に関わっていくべきだと全員が認識しなくてはならないし、チーム内に専門家が混ざっている場合もその専門性があるからといって無意味な序列を残してはいけません。ここらへんをチームのスタートの段階で、手を抜かずに、丁寧に行う必要があります。 他のメンバーはそれぞれに別の視点を持っていることや、自分とは違った角度からものを見たり解釈しているかもしれないことをはっきりと意識し、お互いに話し合うことがとても重要です。
 こうした要素を持つことが「学習する組織」としての本質です。そして著者はチームが上記のような要素を持つという状況は「企業その他の組織的環境において自然に生じることはまずない」と言い切ります。それらは自然発生するものではなくリーダーが主体的に生み出すべきリーダーの役割なのです。
 

最も大切なフレーミングはチームの「登録」ステップ

フレーミングにおけるステップは「登録」「準備」「試行」「省察」の4段階がありますが、このうちリーダーのフレーミングとして特に大切だと感じたのは一番最初の「登録」段階です。
 登録とはチームに加わってもらうメンバーをリーダーが厳選するステップのことです。ポイントは単に「選ぶ」というのではなく「厳選」であるということです。著者は次のようにいいます。

このステップの重要な特徴は、プロジェクトや役割のために特別に選ばれていることを、本人にはっきりと伝えることだ。これにより、専門技術の上でも気持ちの上でもその仕事に深くかかわる用意が整うのである

 

チームの作られ方にはいろいろありますので、必ずしも実態としてリーダー自身が「厳選」したメンバーではないこともあるでしょうし、実際的に専門性やスキルの面で選ばれた特別チームを率いるなんて場面の方が少なくないかもしれません。だとしても、この段階の大切さは変わらないでしょう。
むしろ客観的な専門性に裏付けされていないチームのときの方が大切だといえるかもしれません。そのようなチームの場合、チームメンバー自身が「自分でいいのだろうか」とか「自分たちでできるんだろうか」という不安を抱えていることがあるので、そうした不安を払拭することがチームを適切にスタートさせる上でのリーダーの役割だということです。
例えば自分の経験に照らすと、対人支援のNPO等の現場でボランティアチームを率いる場合、ボランティアメンバーがその分野における専門性を持っていないという場面は多くあります。メンバーだけでなく、リーダー自身もボランティアであり専門職ではない場合ということもあります。それでもそうした対人支援の分野であればその現場で直面する課題というのは明らかに正解の存在しない行動や対応が求められる現場です。
であるならば、初心者であっても知識がなくてもそれに臆することなく振る舞い、試行を繰り返していくための大切なメンバーであり、互いにコミュニケーションをオープンにしていくべきであるといううことを、初期の段階でしっかりと共通認識を作っておく必要があります。この共通認識を作る作業がフレーミングということです。

 

不安を取り除きコミュニケーションをオープンにする

コミュニケーションをオープンにするためにも、リーダーは心を砕く必要があります。基本的に人は組織におけるコミュニケーションに心理的な不安を感じているからです。そしてその不安には、いくつかのパターンがあります。

  • 無知だと思われる不安
  • 無能だと思われる不安
  • ネガディブだと思われる不安
  • 邪魔をする人だと思われる不安

率直に話ができる環境でなくては課題解決を続けていくことはできません。では、こうした組織内のコミュニケーションにおける不安を取り除くためにリーダーが採るべき行動は何かと言うと次のように整理できます。 

  • 直接話しのできる、親しみやすい人になる
  • 現在持っている知識の限界を認める
  • 自分もよく間違うことを積極的に示す
  • 参加を促す
  • 失敗は学習する機会であることを強調する
  • 具体的な言葉を使う
  • 境界を設ける…非難に値する行動をできる限り明確にする
  • 境界を超えたことについてメンバーに責任を負わせる…受け入れられない行動は公正に対処されることを示す

いずれも具体的で自分に足りない振る舞いを見直すことができますね。

 

失敗を歓迎する意味

組織内の不安を取り除くためにはメンバー間のコミュニケーションだけでなく、試行を繰り返してい行く姿勢を持ち続けることが重要ですが、こうした姿勢をチームとして持ち続けるためにリーダーとしてできることもあるといいます。
それは、失敗の必然性と価値の両方を理解しているというメッセージを打ち出すことです。 
著者は失敗も価値あるものであり、インセンティブを与えるべきであるといいます。

多くのマネージャーは、社員が失敗は成功と同じくらい良いものだと考え始めてしまうのではないかと思って、何でも許される気ままな雰囲気が作られてしまうことを懸念している。しかし現実には、ほとんどの人が成功したいと高い意欲を持つようになる。誰しも成功したい、能力を認められたいという願いをもともと持っているのだ

 

正式な評価基準や報奨金の問題ではなく、失敗から学んだ教訓を公式ではない場で認めたり祝ったりするかどうかの問題である

 

これはなるほどと思うと同時に同感です。筆者が言う「ほとんどの人が成功したいと高い意欲を持つようになる」と言うのは、無闇にヒトの性善性を信じるということではなく、ヒトの社会的欲求を軸とした考え方であり、ポジティブな感情が力を発揮できるようにすることです。
 

「すべてがこうあって欲しいと思うくらいくらいにベストだったか?」

さて、最後に引用するのは、チームにコミュニケーションを促し、ポジティブな試行に取り組ませるようにするためのリーダーの質問のパワーです。
複雑でミスが起こりやすい(必然とさえ捉えられている)医療現場という環境において、医療ミスについての改善を促すために、リーダーが放った質問は

「じゃあ今週、各部署で、担当の箇所について、実際にどんなことを経験したか、教えてもらえる?すべてがこうあってほしいと思うのと同じくらいに安全だったかしら」

だといいます。
 これは単に「安全でないことがありませんでしたか」と問うのとは意味がまったく異なります。問われただけで自然と発想が広がるポジティブな問いをうまく活用し、どれだけ言いやすい、考えやすい環境を作れるか。シンプルだけど、非常に大切な視点です。

 

 

 

『チームが機能するとはどういうことか』を読んだ方にオススメの本

最後に本書を読んだ方や興味を持った方にオススメの本をご紹介します。
 

ピーター・M・センゲ 『学習する組織』

本書の中でも重要な概念として何度も取り上げられている 「学習する組織」について興味のある方はぜひ本書を一度手にすることをおすすめします。最近の経営理論に非常に大きな影響を与えている本であり、どんどんと複雑性を増して変化のスピードが早くなる社会の中でこの概念の理解をしていくことの重要性は年々増していると感じます。

 

 ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか』 

『チームが機能するとはどういうことか』の中では「チームメンバーの不安を取り除くこと」がリーダーの重要な役割の一つとして取り上げられていました。最近は組織内の「心理的安全性」というキーワードも注目を集めています。リモートワーク化が進み、仕事と生活の境界線が捉え直される状況の中で改めて、チームメンバーの関係性の作り方に注目したい方にはぜひオススメです。「人と組織のバージョンアップ」を可能にする組織を「発達指向型組織(DDO= Deliberately Developmental Organization)」と定義し、DDOを目指すためのステップが解説されます。 

 

前田孝歩、後藤洋平『予定通り進まないプロジェクトの進め方』

予定通り進まないプロジェクトの進め方

予定通り進まないプロジェクトの進め方

 

チームビルディングに興味を持っていたり、課題を感じている人の中には、何らかのプロジェクトを率いる立場の方もいらっしゃるかと思います。数あるプロジェクトマネジメントの本の中でも非常にオススメなのがこちらの本です。プロジェクトの進捗や状況変化を将棋の棋譜のように捉える「プロジェクト譜」というフレームワークを提示し、プロジェクトは振り返りが可能であり、再現可能なものと主張します。チーム内での議論も起こしやすいですし、何より活用しやすく効果的なフレームワークだと感じます。 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。