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サーバントリーダーシップを学ぶためのおすすめ本5冊

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サーバントリーダーシップを学ぶためのおすすめ本5冊

こんにちは。書評ブログ「淡青色のゴールド」へようこそ。本記事では『サーバントリーダーシップを学ぶためのおすすめ本5冊』と題し、これからサーバント・リーダーシップについて学びたい人にオススメの本をご紹介します。

 

 

サーバント・リーダーシップとは

サーバント・リーダーシップとは

サーバント・リーダーシップとは、サーバント(Servant/召使い、使用人、奉仕者)とリーダーシップ(Leadership/指導、統率、指揮)という相反する言葉を組み合わせたリーダーシップ概念です。アメリカの電力会社AT&Tに勤務し管理職教育の設計や研究に取り組んでいたロバート・K・グリーンリーフが1970年に「サーバントとしてのリーダー」というエッセイの中で提唱しました。

その基本的な考え方は、

リーダーである人は「まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップの実践に関する哲学。地位や権力により相手を動かすのではなく、まず他者に対する思いやりや共感があり、その行動によって信頼と協力を得るべきである。

というものです。

先頭に立ちメンバーを引っ張っていく”強い”リーダーが注目されることが多い中で、グリーンリーフが提唱したサーバント・リーダーシップはむしろメンバーを支えることから始まるという従来のイメージとは真逆のイメージを提唱し、注目を集めました。

サーバント・リーダーシップの10の特性

サーバント・リーダーシップの10の特性

もちろん、ただメンバーを下から支えることだけではリーダーとは言えません。サーバント・リーダーにはメンバーを支えその力を十分に引き出すという「サーバントの側面」と、大義あるビジョン・ミッションを示す「ビジョナリーなリーダーとしての側面」の両方が必要です。

提唱者グリーンリーフの意を継ぎ、グリーンリーフセンターの所長を務めるラリー・スピアーズはサーバント・リーダーの特性を次の10項目にまとめています。

「概念化」「先見力、予見力」「傾聴」「共感」「癒し」「気づき」「説得」「執事役」「人々の成長に関わる」「コニュニティづくり」

サーバント・リーダーシップへの期待は年々強くなっている

最初に提唱されてから約50年が経過しており、その間に他のさまざまなリーダーシップ理論が登場していますが、サーバント・リーダーシップは近年になり年々注目を集めるようになってきています。現代の社会状況や組織運営のトレンドとサーバント・リーダーシップの考え方が合致していると捉えられるからです。

背景①VUCA時代は一人の強力なリーダーシップでは立ち行かない

これからの社会をとらえるキーワード“VUCAの時代”

社会状況全体の背景として挙げられるのはVUCA※と言われる社会状況です。グローバリゼーションの進展、AIなどテクノロジーの進化、自然環境や気候の変化、超少子高齢社会化・人生100年時代、移民難民やLGBTQ・障害など多様な属性や価値観との共存など、さまざまな変化や変動が起きていく時代においては、強力なリーダー1人だけが組織を引っ張り、過去の成功に基づき計画を立て遂行していくだけでは不十分だと認識されるようになってきています。

背景②心理的安全性が求められる時代

不安定な社会状況の中でもイノベーションを起こし続けている企業として名高いグーグル社が、チームの生産性を高める重要な要素として注目し、近年の組織開発において流行でもあり常識にもなりつつある心理的安全性という考え方があります。「チームメンバーに非難される不安を感じることなく自由に意見を伝えられる状態」のことを指し、チーム全体でこの雰囲気を確保できているチームは、日頃から相互に気軽な相談がなされ、失敗を恐れずにチャレンジが発生しやすいために、高い成果が出やすいと言われています。

メンバーを支え、メンバーの力を引き出すサーバント・リーダーには、メンバーからの信頼が生まれるため、心理的安全性につながりやすくチームの生産性を高めることにつながるという研究成果も出てきています。(Edmondson,1999)

※現代の社会状況を表す4つのキーワード、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉。

サーバント・リーダーシップを学ぶためのオススメ本5冊

ここからは、これからサーバント・リーダーシップを学びたいと考える方にオススメの本をご紹介します。サーバント・リーダーシップに関する書籍は他にも複数ありますが、まずは基本的な考え方を理解するのにオススメの本を選びました。

『これからのリーダーシップ』(堀尾志保・舘野泰一)

まず一冊目は、サーバント・リーダーシップ自体についてではなく、さまざまなリーダーシップ研究を取り上げている書籍です。これまでに他のリーダーシップ理論を学んだことのある方や基本的なリーダーシップの概念、研究についてご存知の方には不要かと思いますが、初めてリーダーシップについて学ぶ状況であり、その中でサーバント・リーダーシップに注目しているという方にはぜひオススメします。サーバント・リーダーシップだけを学ぶよりも、まずは他のさまざまなリーダーシップ理論についても知った上で、サーバント・リーダーシップの特徴を知ることでより深く理解できます。リーダーシップ研究の歴史的な発展や経緯についても理解できますので、昨今の社会状況の中での必要性についても理解を深めることができます。

また、本書はリーダーシップ理論の解説だけにとどまらず、リーダーシップ教育に関する理論や研究の状況についてもまとめて解説されています。自分自身のリーダーシップを強化していきたい、あるいは組織内のリーダーシップ開発に取り組みたいというニーズを持っている方には特にオススメです。

Amazonから紹介文を引用します。

時代によりリーダーの代名詞は変わりますが、洋の東西を問わず、人々を率いるリーダーのあり方は関心を持たれ続けてきました。本書は、「最も研究されているけれども、最も解明が進んでいない領域」(Bennis & Nanus, 1985)ともいわれるリーダーシップ論に関し、これまでの研究の転換点、最新の研究潮流と合わせて、リーダーシップの発揮・教育に向けた具体的な実践方法について紹介していきます。

当ブログで書評も書いておりますので良ければお読みください。

書評『これからのリーダーシップ 基本・最新理論から実践事例まで』リーダーシップ理論・リーダー育成の研究を一冊で概観できる良書 - 書評ブログ『淡青色のゴールド』

『サーバント・リーダーシップ実践講座』(真田茂人)

日本でサーバント・リーダーシップの普及啓発活動を行っているNPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会の理事長真田氏の著作です。入門編の書籍としては個人的にはこの本が最もわかりやすいと感じます。社会状況の変化の中でサーバント・リーダーシップが注目されるようになってきた経緯、サーバント・リーダーシップと他のリーダーシップの違い、サーバント・リーダーシップの要件や効果、そして企業におけるサーバント・リーダーシップ発揮の事例などバランス良く書かれており、体系的に整理して学びたいという方にオススメです。

Amazonから紹介文を引用します。

本書では、支配君臨型リーダーに代わって注目され始めているサーバント・リーダーシップの考え方を、スターバックスやサウスウエスト航空などの企業の事例を交えて紹介する。

入門講座の受講もオススメ

著者の真田氏が理事長を務める日本サーバント・リーダーシップ協会ではサーバント・リーダーシップに関する入門講座や関連する書籍の読書会等のイベントを開催しています。特に入門講座は初心者向けに設計されており、概要を簡単に学ぶことができますので、書籍を読むよりセミナー受講で学びたいという方はチェックしてみてください。

www.servantleader.jp

『サーバント・リーダーシップ入門』(金井壽宏、池田守男)

立命館大学教授・神戸大学名誉教授で、日本のリーダーシップ研究やキャリア研究の第一人者である金井壽宏氏と元・資生堂相談役の池田守男氏による著作です。第1章で金井氏が、サーバントリーダーシップについての解説を行い、その後実際に企業経営の現場においてサーバントリーダーシップを発揮した池田氏が自身の経験を振り返りながらサーバントリーダーシップとの出会いやサーバントリーダーシップによる経営改革について自伝的に解説します。その後の第3章、第4章では金井氏と池田氏の対談形式でサーバントリーダーのあり方がさまざまな側面から掘り下げられます。

リーダーシップ研究に詳しい金井氏による解説は分かりやすいものですが、約250ページの著作の第一章分のみですので、体系的な解説としては先に紹介した『サーバント・リーダーシップ実践講座』の方がわかりやすいと感じます。本書の特徴はやはり実際に企業経営者としてサーバントリーダーシップを発揮した池田氏の経験談が深く語られていることです。提唱者のグリーンリーフが「サーバントリーダーシップは理論ではなくリーダーシップに関する哲学だ」と述べていることもあり、実践者の言葉から感じ取るという学び方は本来の趣旨にはあっているかと思います。入門書として『サーバント・リーダーシップ実践講座』を手にするか『サーバント・リーダーシップ入門』にするかは、ご自身の学びのスタイルから選択するのが良いでしょう。

Amazonから紹介文を引用します。

リーダーが掲げるミッション・ビジョンを実現すべくメンバーはついてくる。
そんなメンバーをリーダーは下から支え尽くす。
これがサーバント・リーダーシップの考え方だ。

『サーバント・リーダーシップ』(ロバート・K・グリーンリーフ(著)、ラリー・C・スピアーズ(編集))

サーバント・リーダーシップ概念を提唱したグリーンリーフによる著作です。サーバント・リーダーシップについて学んだり、実践することを考えるなら一度は読んでいただきたい書籍です。ただし、最初の一冊としては個人的にはあまりオススメしません。600ページ近い大作であることや、さまざまな場に発表された文章や講演等を集めた著作であり体系的な整理はなされていないこと、抽象的な議論が多いことなどから、一読してパッと理解できるという類の本ではありません。読んで感じたこと、受け取れたことがあればそれを踏まえて実践し、ある程度実践をしたらまた本書を読み返す、すると今度は前回とは違った部分から感じることがあり、また実践に戻り…といったことを繰り返しながら何度も味わっていくのが本書との付き合い方ではないかと個人的には感じています。

そのような読み方が求められるので、初めて学ぶ方に強くオススメする書籍ではないのですが、それでも基本的にはすべてのサーバントリーダーシップの解説は提唱者であるグリーンリーフ自身による言葉から始まっています。最初の一冊にこれだけを手にすると(特に読書にあまり慣れていない方は)挫折してしまう可能性もありますが、この本抜きで語ることもできない、という本です。

Amazonから紹介文を引用します。

自らの良心に従い、より良い世界へ導くことを自身の責務と信じ、周囲の人々にとって、組織にとって、優先されるべきことがなされているか常に心をくだく――そうした「サーバント」としてのリーダー像を描いた本書は、混迷の時代の中、いっそうその輝きを増している。 読み継がれてきた不朽の名著、待望の邦訳。

『謙虚なリーダーシップ』(エドガー・H・シャイン、ピーター・A・シャイン)

最後にご紹介するのは キャリア研究やリーダーシップ研究で世界的に有名なエドガー・H・シャインによる『謙虚なリーダーシップ』です。本記事の中でもサーバント・リーダーシップが注目される背景の一つとしてご紹介した心理的安全性のキーワードについて、シャイン流の目線で切り込んだのが本書だといえます。前作『謙虚なコンサルティング』に続いて「謙虚な」というキーワードで強調されており、単に業務上の関係にとどまるのではなく、個人的で信頼しあう関係をいかに構築するかが大切であるということが、さまざまな事例を引きながら解説されます。

本書で解説されるのはサーバント・リーダーシップ自体ではありませんが、サーバント・リーダーシップに通じる考え方だと言えます。著者の言葉を少し引用します。

このモデルは、サーバント・リーダーシップや変革型(トランスフォーメーショナル)リーダーシップや、インクルーシブ・リーダーシップのような他のモデルの代わりにはならない。だが、それらのモデルが成功するための、不可欠なプロセスであり、動的な要素だと言える。謙虚なリーダーシップは、仕事の世界が複雑になっていくなかで、絶えず意義深い前身を続ける文化をつくり出すことに関係しているのである。

本書はエドガー・シャインが、息子のピーターとともに著したものです。執筆の担当わけは記載されていないのですが、前半はピーター担当分なのか文章に勢いや魅力が感じられず、正直これまでのシャイン氏の著作の中では面白味に欠ける部分があるとも感じています。ただ、後半は魅力ある文章で書かれていますし、最終章で紹介されるブックリストと、個人として実践できるワークの紹介は、サーバント・リーダーシップの実践を考える方にも活きるものだと強く感じたため紹介させていただきました。

Amazonから紹介文を引用します。

人と組織の研究に多大な影響を与えてきた研究者が、半世紀にわたる探究の末にたどり着いたリーダーのあり方とは。
『人を助けるとはどういうことか』『問いかける技術』など、数々の名著を生み出した著者の集大成。


以上、本記事ではサーバントリーダーシップを学びたいという方向けにオススメの本を紹介いたしました。個人的にもまだまだ勉強中ですし、まだ未読の本もあります。あまり冊数を増やしすぎるのも良くないとは思いますが、今後他のオススメ本が見つかった場合には更新や追加を続けていきたいと思います。